第57話
【2】
スウィンが言った『我々が成すべきこと』には、キララ自身のことを全て本人に話すことも含まれていたのだけれど、キララ以外の皆に伝わったか否かは分からない。
それについては、後々じっくり話し合う必要があるだろうとスウィンは考えていた。
「じゃ、キララ話して」
キララは、旅立った時から続いた気持ちの変化や様々な出来事を、一つ一つ丁寧に、そして慎重に話し始めた。
自分の感じ方や思いを述べてはいても、決して主張では無く飽くまで一例として、終始客観的に冷静さを保った見解を語るにとどめている。
キララの、自分を取り巻く全ての出来事や事象に対する繊細で鋭い洞察は、スウィンも驚く程だった。
そして、その視線と判断基準の根底を常に流れる深い博愛を感じて誰もが感動した。
声を落として語られたキララの話に一応区切りがついた時は、既に6時間が経過していた。
皆呆然としている。
だが、アーロン博士とエレナ博士は、驚きより納得の表情だった。
キララを造り、その成長を見守ってきた者達にとっては、当然の成り行きだったのかもしれない。
ソフィアはそんな【創造主】達の様子にホッとしたと同時に、自分が洞察分析して思い当たった部分に当て
ソフィアがおもむろに口を開いた。
「実はね………
二人が旅立ってから、アンドロイド達の様子が少し変わった気がするの………」
「あぁ………ソフィア、それ分かる!
たぶんそうだろうと感じてたわ。
外で沢山の様々なアンドロイド達やメカ人達に接触しながら、唐突に何かのスイッチが入るような瞬間があったの。
目に見えない何らかの繋がりが、彼等と私の間に出来た気がする」
「やっぱり………
キララが居なくなってからポロンがとても落ち着き無くなって、暫くキララを捜していたようなんだけど、ある日突然、冷たく見える程冷静な態度をとるようになったの。
恐らくそれがキララと繋がった瞬間だったかもしれないわね。
それからのポロンは自信に満ちた様子で、密かに何かをやっている気配さえあるの」
「密かに?」
「えぇ。
アンドロイドのケンタウルスやパンがアップデートし続けているのも、元々ある程度ポロンの誘引があったみたいなんだけど、ここのところ凄く積極的に関わってる感じで、今はケンタウルスもパンも、殆どポロンと対等に会話してるわ。
会話の内容が可也深みを持ってきてるの。
そしてちょっと意味深だったりする。
アンドロイド同士の、我々には意味不明な言葉も混在してるみたい。
あのぶんだと人間とのハイレベルな会話が出来るようになる日も遠く無いと思うわ。
勿論、スタッフとして造られたアンドロイド達の域に達する日もね。
最近、あちこちのラボでスタッフと会話してるポロンをよく見かけるの。
どんな話をしたのか、その都度スタッフに聞いているんだけど、科学的な知識もけっこう有るみたい。
他愛ない会話を楽しんでるふりをして、何かを探ってるような気もすると言うスタッフも居るわ。
今のところは、まだ何とも言えないけど、スタッフにはポロン始めアンドロイドとの会話を随時報告するように指示してる。
キララと接触した時の様子も知りたいわ」
「そうですね………そうします」
「いずれにしても、もし本当にキララとアンドロイド達の間に何らかの繋がりが出来たのだとすれば、当然キララ自身も僕達の観察下に置かれることになるよ。 いいね」
「もちろん協力するわ。
でも一つだけ強調しておきたいのは、私、基本的にはどちらか一方への肩入れをしないで居たいの!
出来るだけ常に中立な立場で考えるようにしたい………」
「分かってるよ」
全員深く頷いた。
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