第53話
【2】
「怖い?………」
キララは大きく頷いて、コーヒーを
半袖のTシャツ1枚で極寒の中に放り出されたように震えが激しくなった。
スウィンは急いでエアカーを上昇させ、外界が見えないようにした。
そのまま低速で人工物のある場所を探しながら移動する。
暫くしてキララは落ち着いたが、スウィンは静かにキララを見守った。
「ハァ……… ごめんなさい………
本物の太陽と塩の鏡に映る偽物の太陽が一体化している光景を見ていたら、【偽り】【偽り】………と私自身が責められる恐怖に襲われたの。
まるで私が【偽物】であるかのように………」
スウィンはドキッとした。
「どうしたんだろう………?
私は何か罪を犯したの? 私は私じゃ無いの?」
「………………」
スウィンはキララに全て話すべきかもと思い始めた。
しかし今は何も言えない。 言うべき時でも無い。
ただいつか話す時が来ることの覚悟はしておかなければならないと、スウィンは改めて気を引き締めた。
「ひょっとして私、アンドロイド?」
「そんなことある筈無いじゃないか!」
「でも、そう考えれば納得できることが山ほど有るわ………」
「そう考えれば納得できること……?」
ーーーーーやはりキララは、自分の出生に関して疑問を抱いていたんだ………
しかも、アンドロイドに近いと感じるものがキララには有るってことか………?ーーーーー
「私やっぱり外は駄目なのかな………」
「大丈夫! ゆっくりで良いさ。
少しづつ克服していこう! 僕と一緒に!」
「もし克服できなかったら?」
「その時はその時! また一緒に考えよう!
絶対なんて言わないから、出来ることからキララのペースでやっていこう。
僕も無理は言わないよ。
既に踏み出しているわだから、結果がどうあれ凄い進歩じゃないか。
取り敢えず僕が出発するまでの1年弱は、僕がキララに付きっきりで協力する。
って、邪魔かな………?」
「(笑)邪魔だなんて。
私こそスウィンの邪魔にならない?」
「とんでもない!
どうせ出発まで暇だし、キララと居ると楽しいし」
と言いながら、【キララと居ると楽しい】自分に改めてスウィンは気づいた。
「有り難う……… 宜しくお願いします」
「ところでキララ、思い出させちゃうけど解決の為に一つ聞いていい?」
「えぇ、何でも聞いて!
もし聞かれて私が苦しんだとしても、構わず聞くべきことは最後まで聞いて!
私恨んだりしないから(笑)」
「分かった。
必ず解決策を見つけるよ!」
「必ずなんて約束しなくて良いわ! 約束ほど不確かなものは無いもの。
そうやって私の為にスウィンが思いを巡らせてくれているだけで充分。
結果何の進歩も解決も出来なかったとしても、その時はその時、あれ?スウィンの真似しちゃった(笑)」
「(笑)そうそう、その時はその時!
ところで、さっきキララが言った『自分が責められてる恐怖』って………」
「もの凄くはっきりとしたクオリアとして体感したと言って良いと思う」
「なるほど………
さぁて、次は何処へ行こうか…………
取り敢えず人工物の有る場所にしよう!
そうだ! スクエア.キロメートル.アレイはどう?
パラボナアンテナの壮麗な大群なら、キララもセンターから見える電波望遠鏡群の眺めで馴染んでいるだろう?」
「えぇ! 私一度は行きたいと思っていたの!
たしか、南アフリカとオーストラリアに渡って造られた超巨大望遠鏡よね。
可也昔の建造でしょ。
今は区域もけっこう広がったって聞いてるわ」
「そう。 西暦2020年くらいから観測開始した筈だけど、最初は数千個の電波望遠鏡から始まって、それからどんどん望遠鏡の数も増えたらしいよ。
今じゃ、スイスやイタリアにも渡って望遠鏡の数も万単位になってるらしいし、望遠鏡の一つ一つの機能も可也バージョンアップしてるみたいだ」
「うわ〜!ステキ!」
「よし決まった!」
まずは車内で軽い夕食を済ませ、早速二人はオーストラリアへと向った。
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