第43話
【2】
「話が尽きないわ〜!
ねぇ、よかったらお茶してく?」
「あぁ……ありがとう。
ん………やっぱり今日はやめとくよ。
そうしたいのは山々だけど、またにする」
「また来てくださるの?」
「うん、近々また来るよ。
その時は是非お茶に呼ばれたいな!」
「了解!
じゃぁクッキーを焼いておくわ!」
スウィンは、何か追われるような気分でその場を去った。
違う! 何か間違ってる!
得体の知れない不安がスウィンの心を
スウィンはそのまま真っ直ぐエレナ博士のラボに向った。
ラボには丁度アーロン博士も来ていた。
「丁度良かった!
御二人に聞きたいことが有るんです」
「私達も話さなければならない事が有るの。
アナタから話してみて」
「キララに会いました。
事情も聞きました。
どうして僕に話してくれなかったんですか。
友達になることだって出来たのに………」
「私達の話もその事なの。
キララの事は、外部には絶対漏らせなかったのよ。
まだ子供だったアナタにも。
様々な事に対する配慮なの」
「どうして外部に知らせられないんですか?
元センター職員が産んだ子供をセンターが育てることに何か罪があるとでも言うんですか?
学校に通わせなくても、教職の資格を持つスタッフは大勢居るわけだし、ちゃんと許可も得たんでしょ」
エレナ博士もアーロン博士も首を大きく横に振った。
「許可無く? そこまで秘密にする理由なんか無いでしょう」
「アナタが聞いたキララの『事情』は
キララは私達が造ったの」
「造った……… って、アンドロイド?」
「アンドロイドじゃ無いわ」
「ど、どういうこと?!」
「人工人間ってことよ……」
「えっ? 人工子宮で育てたってことですか?」
「勿論人工子宮も使ったわ。 でも今時人工子宮なんて当たり前のことでしょ。
私達は、加えて『精子』も造ったの」
「……………と言うことは……… DNAそのものを?」
エレナ博士とアーロン博士が同時に頷いた。
「全く新しい遺伝子を、この手でね………」
「なんてこと………」
重い沈黙に包まれた。
暫くしてようやくスウィンが口を開いた。
「単なる遺伝子操作では無く、ゼロからと言うことですよね……」
エレナ博士は深く頷きながら大きな溜め息をついた。
「一線を越えてしまったのですね………
………何故そんな事を………?」
「そう………神への
自嘲して言葉を吐き捨てるエレナ博士をスウィンは
「我々ももの凄く悩んだし迷ったわ。
でも、どうしても生物としての人類を残そうと決めたの。
*******果たして今の人類を残す必要があるのか?
猿だった頃の人類を残してはいないわけだし、進歩とともに人類が変化していくのは当然のことで、全く違った生物になることも飽くまで人類の選択だ。 どんな末路であろうと。
ここで[生物人類]が滅んだとしても、それを受け入れなければならない。
そこまでが宇宙人としての人類の役目だったに過ぎない*******
という見解が多数有ったわ。
ただ今の人類の変化は、これまでの生物としての進化的変化とは違う傾向がある。
『生物人類』をメカ化しようとしてる。
それは生物としての進化とは言えない。
もう『生物人類』以外の何か、或いはただのメカでしかなくなる。
宇宙への行動範囲が広がる程その傾向は強まって、加速度的に生物から他の何者かへの移行が進む可能性大! 必要に迫られるからね。
今や精巧なアンドロイドとの差が殆ど無くなっているから、あっという間に何もかもアンドロイドに超越され支配されることも有り得るでしょう。
人類は焦って、より強力なメカ化に
でもその時は既に遅く、取り返しのつかない状態になっている。
我々は、これまでの状況からその暴走にブレーキをかけられるのはメカ同士の競争じゃ無く、『生物人類』の生物的感覚だと思うに至ったの。
今が限度なの! 選択の岐路に立たされてる!
そして、今が『神の領域を超える』勇気を後押ししてくれる絶好の時期とも言えるの!
そういう結論に達したのよ。
私達人類もひょっとしたら、私達と同じかそれ以上のテクノロジーを持つ異星生物、或いは異次元生物の手でこんなふうに造られた存在なのかもしれない。
そうだとしても、その生物達がどんな理由で私達を造ったのかは分からないし知る由もないわ。
もしかしたら自分達が崇められたくてかもしれないし、ゲームの登場人物として造られたのかもしれない。
だけど我々は、決して『神』になるつもりは無い!
虚栄心や権威の為でも無い!
人工人間を駒にして遊ぶなんて以ての外よ」
「それは分かってます!」
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