第40話

        【2】


「学校もセンターだった。

このスペースに教室が有ったのよ。

此処は知ってのとおりチリのアルマ望遠鏡が見える場所に有るわけだけど、センター内には才能豊かな先生が大勢居るから、わざわざ遠いセンター外の学校に通う必要は無いということだったらしいわ。


お陰さまで優秀な教育を受けることが出来たと思う。

人格的に優れているか否かは別の話だけどね(笑)

そのへんは何処でも同じでしょ!(笑)


アンドロイドの先生も居たわ。

それだって外の学校でもアンドロイドの先生がけっこう活躍してるようだし。


センターは私の学校でもあったけど、アンドロイド達の学校でもあったの。

アンドロイド達も私と一緒に学んで成長し育ったのよ」


「あまりセンターを出たことが無いって言ったね」


「たまには有るわ。

エレナ博士が連れ出してくれた。


エレナ博士のお母様、つまり貴方のお祖母様の故郷日本へも連れて行って頂いたし、お祖父様の故郷イギリスにも。


ハワイ島のマウナケア天文台群が火山の噴火で痛手を受けた時も、調査に同行したわ。


ずっと前のことだけどね………」


「しかも、たまに………だったのか………」


スウィンは不安が深くなっていくのを感じた。


「今は殆ど外出してないの?」


「えぇ、私外に出ても、すぐセンターが恋しくなるの。

なんだか怖くなっちゃって………」


「それは出慣れてないからじゃなく?」


「ん〜…… それだけじゃ無い気がする……」


「両親もセンターの皆も、どうして君をそんな状態のままにしておくんだ………」


「良いのよ。 私センターが一番好き!」


「そういう問題じゃ無いよ…」


「ってわけで、私が生まれた時から、センターに私と友達になれそうな年代のスタッフが入ってくるまでの18年間、ずっとアンドロイドが友達だった!

だから、私の成長に合わせた年代のアンドロイドが全て此処に居るの。


中には最後までずうっと私の傍に居て、私と共に成長したアンドロイドもけっこう居るわ。

母体だけ替えてデータをダウンロードしてね。

親友も居る。


大勢のアンドロイドと関わって、一緒に勉強したし遊んだわ。


いつでも起動させることは出来るけど、もう何も知らずに居た時とは私自身が違う。

怖くて起動する勇気が無いわ」


「君は、友達がアンドロイドだっていつ気づいたの?」


「10歳前後から薄々気づいてた。


だけど、それでも構わないと思ってた。

アンドロイドでも友達は友達だし、楽しかったから。


アンドロイドに組み込まれている『感情プログラム』も可也ハイレベルだったしね。


でも………10代を上っていくに連れ、感覚的な違いを強く感じ始めたの。とても根源的な部分でのね。

人間の『感情』領域の奥深さをそう簡単に造れる筈無いもの。


その時友達の全てがアンドロイドだと確信したの。

『確信した』と言うより『確信できた』と言った方が正解かもしれないな。

薄々気づいていても、認めたく無い思いがあっから。

私なりのアンドロイドに対する知識も深くなっていたから、当然の成り行きだけど。


混沌こんとんとした思いが頂点に達した頃、18歳の天才少女がセンターに所属したの。

エマって言うのよ。


丁度私も18歳だった。

エマとはすぐ友達になれたわ。


その頃から私は、エマとばかり付き合うようになったの。

同世代の人間との会話は本当に楽しかった。


そしてアンドロイド達とは距離を置いた。


親友のアンドロイドが私の所へ遊びに来ても、会話がつまんないと感じて、それを露骨ろこつに態度で出してしまったの………

彼女は去って行ったわ。

今でも寂しそうな彼女の後ろ姿が忘れられない………


その頃の私が感じていた程、人間とアンドロイドの違いが大きいものでは無かったのかもしれない。

人間同士での感覚的な違い程度のことだったのかもとも思う………

たまたまエマは人間の中でも感覚的に私と合うタイプだったというだけのことかもしれない。


私の遅い反抗期だった気もする。


だけど………正直、その頃の私はアンドロイドに対する『嫌悪感』さえ感じていたの。


それから少しづつ友達が稼動を止められ、仕舞しまわれていったわ。


今は本当に申し訳無かったと思う。

また仲良くしたいとも。

でも、そんな一方的なむごい別れ方、いえ捨て方をしてしまった負い目があるから、余計起動出来ないの。


だから私、時々此処に来て動かない友達に謝ってるのよ。

動かない状態のまま謝るなんて卑怯よね私………


私の中に『私は人間で、アナタ方はただのメカよ』って言う思い上がった気持ちが有った気もするの。

『だから何?! メカが人間に劣るとでも?!』って言われたら返す言葉が無い。


そんな意識を持っていたかもしれない自分が凄く許せない!」


キララは俯いて唇をんだ。

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