第37話

        【2】


最初は船(宇宙船)の待機エリアに行ってみた。


それは、いぶし銀の驚く程スマートなデカい船だった。


さすがに重力発生装置搭載では、いくらスリムと言ってもこれが限界なのだろう。

開発したスウィンはもっとバカデカイ作りでもやむを得ないと考えていたので、それに比べれば可也のスリム化だし、フォルム自体も思っていた以上にスマートだ。


だが、威厳に満ちた巨体をの当たりにするとスウィンは思わず息を飲んだ。

自分がこの船のリーダーだという重責に押し潰されそうだった。


既にソフィアが来ていて、船の巨体に存在を消されそうになりながら遠くで技術スタッフと話していた。


スウィンに気がつくと

大袈裟おおげさに手を振りなから「こっちに来て!」と合図をよこした。


スウィンが駆け寄ると


「スウィン、紹介するわ」


そう言って3人のメンバーを紹介してくれた。


「凄いでしょ!

これを造った彼等も一緒の旅立ちだから心配無いわ。


あなた方も、これを開発したスウィンがリーダーだから安心よ」


そう言ってスウィンと技術スタッフ、そしてソフィア自身を励ましているようだった。


                        

巨体の中にはまだ入れないということだったので、取り敢えず他のエリアを見学することにした。


散歩がてらにぶらぶらセンター内を歩いていると、可也奥まった所まで来た時妙な声が聞こえてきた。

声の源は他の部屋と少し離れた場所に有った。


殆どの部屋は自動ドアだったが、その部屋はレトロな手動ドアで扉は開け放たれていた。


扉の外側を見ると、『スペシャル ルーム』とだけ表示されている。


声は、金属音のようでもあり、甘えるけものの鳴き声のようでもある。


突然


「は〜い、お待たせ〜!」


と若い女性の声が響いた。


すると急に獣が騒ぐようなガサゴソと騒がしい音と、ドアの開く音が聞こえた。


続いて


「はい! お肉お肉! いっぱい食べていっぱい遊ぶんだよ!

間違ってもお友達を食べようなんて考えるんじゃないよ」


と言って朗らかに笑っている。


スウィンは、開け放たれているとは言え黙って入るのは躊躇ためらわれたので、壁を2度ノックした。


「どうぞぉ〜!


今おチビちゃん達がお食事中なの。

勝手に入って!」


スウィンは遠慮無く中へ入ると、棚にさえぎられた向こう側に顔だけ出した。


ほっそりと小柄な女性が、ガラス張りの大きな部屋から出て背中越しにドアを閉めたところだった。


「………あら………


貴方スウィンね」


女性はキラキラと輝く星のように微笑んで、スウィンをじっと見つめた。


「あぁ良かった! 知ってて下さって」


スウィンはつかつかと女性の方に近づいて行った。


スウィンと同じくらいの年齢に見えるその女性は、レトロなオフホワイトのカットソーにグレーのGパンというカジュアルな装いにもかかわらず、ハッとする程周囲の全てをみずからの輝きで満たしている。


細かにウェーブした金髪のせいかもと一瞬スウィンは思ったが、そうでは無く彼女自身からにじみ出る輝きであることが、湖のように深いブルーの神秘的な瞳を間近で覗き見て分かった。


「貴方のことはよく聞いてるわ。

あっ、ごめんなさい! 私 ❝キララ❞よ」

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