第35話
【2】
そんな時代に、頭脳的にも人間的にも優れた科学者である親達二人の元に生まれ育てられたスウィンは、文字通り聡明で賢く、フィジカル面でもメンタル面でも健康且つ優秀だった。
当然のように飛び級飛び級で12歳には大学院をクリアして、すぐに国際宇宙センターの勤務が決まった。
脳に何らかの持続的な刺激を与えるなど、テクノロジーの力を借りてコンピュータ化した頭脳を持つ者にとっては当たり前のプロセスだっが、スウィンの場合は生の人間状態での功績だったので、周囲の称賛も
しかも、両親の気質や影響もあって色濃く持ち合わせた人間味は、メカや半メカな者達の尊敬と同時に
しかしそんな低次元の、そこだけは人間的な感情の攻撃に屈する程ヤワでも無かった。
12歳のスウィンが最初に着手した業務は火星のテラフォーミングと、木星の衛星エウロパ、ガニメデの開発遂行、そして人工ワームホールの重力対策だった。
国際宇宙ステーションは既に太陽系内のあちこち合わせて7ヶ所に設置されていた。
スウィンはその中で一番古く、一番近いマルスステーションに配属された。
本来は素っ気なく太陽系第1ステーションと命名されていたが、火星との往来用として設置されたステーションなので『マルスステーション』と呼ばれていた。
どちらにしてもマンマな感じが
スウィンの両親もまたマルスステーションに勤務していた。
父親は天文物理学専門、母親はバイオテクノロジー専門だったが、二人ともセンター内全ての分野に精通しており、センタースタッフ皆には親のように慕われていた。
職場でのスウィンは
両親から学ぶことは全てに於いて偉大で、充実した楽しい日々が続いた。
スウィンは着々と担当業務の段階をクリアしていき、次々に研究の成果も上げ、2年後にはステーションの全てを把握し、加えてリーダーの資質も見せ始めた。
まだ14歳だったけれど、
スウィンは、それから10年をかけてマルスステーション以外のステーション6ヶ所を巡り、殆どの任務をクリア把握して、ようやく地球の国際宇宙センターに戻った。
既に両親も戻っていた。
そして、新たな任務もスウィンを待っていた。
24歳になったスウィンは確実に『大人の男』だった。
いや、その域を超えているかもしれないと両親は感じた。
仙人をさえ
両親は暫く眩しげにスウィンを見つめていた。
「両博士、そしてお父さん、お母さん、只今戻りました」
傍らで見ていた半メカな者達は、何かを思い出したような感覚を抱きながらも冷静に観察していた。
アンドロイド達は、不思議な表情で一部始終を見つめていた。
この後、高度な『感情プログラム』挿入を希望するアンドロイドが続出したらしい。
両親の涙には、感激と同時に他の理由も有った。
スウィンがすぐまた出発しなければならないことを知っていたからだ。
しかも可也危険な任務で。
早速センター長から厳かに次の任務が告げられた。
ワームホールでの初遠距離有人飛行スタッフリーダー。
それがスウィンの新たな任務だ。
スウィンが研究開発したワームホールの重力発生装置が完成したのだ。
『スウィンがセンターへ戻るまで必ず完成させる』をスローガンにして、スウィンの仲間達を筆頭にセンターのスタッフ全員が協力し、スウィンの研究開発に結果を出したのだ。
そして、初飛行の栄誉はやはりスウィン自身にと決めていた。
栄誉は有り難いけれど、親としては複雑な思いを拭い切れないのも当然だ。
しかしそれが全く逆の結果になることを、つまりスウィンの旅立ちを親としても喜べる結果になることを今はまだ知る由もない。
スウィンは全員に感謝を述べてから任務計画を確認した。
↓挿し絵 スウィンを描きました
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