第32話
【1】
「なんてことだ!
みんな逃げろ〜!」
皆悲鳴をあげて元来た道を爆走した。
道の先の石が次々に輝きを失い、すぐ其処まで迫っていたのだ。
しかも、石が作るバリアが無くなった部分の道はガラガラと砕け、その欠片は流れる者達と共に静止していた。
進むべき道が無くなっている。
生きもの
スウィンは息絶え絶えのキララを励まし続け、途中からキララの手をしっかり握り締めて引っ張りながら走った。
「スウィン、もうダメ、先に行って……」
キララの弱々しい声で我に返ったスウィンは、一旦足を止めた。
既に例の爆音は害の無い程度に聞こえる距離まで戻っていた。
迫りくる道の崩壊もまだ見えない。
暫くは大丈夫だろう。
他の者達もスウィンに
誰もが話すことも出来ない程荒い息をして膝に手を置き、息を整えたり座り込んで今にも気を失いそうに
こうしている間にも道はどんどん無くなっていると思うと、スウィンは居ても立っても居られない。
言葉は出ないが、深い息を繰り返しながらブラックに手で合図して近づいて行った。
ブラックの方からもフラフラとスウィンに歩み寄ってきた。
流石のブラックもまだ話せる状態では無い。
すると、少し離れた場所でへたり込んでいたケラケラからの言葉が、スウィンとブラックの頭の中に直接響いた。
「全て終わりか………」
「終わりになんかさせない!」
「でも道が無くなったら、これ以上どうしようも無いだろう!」
「スウィン、確かに今はケラケラの言う通りかもしれない。
もっと戻って一旦森を出た方が良いんじゃないか?
せめて子供達だけでも。
時を待ってまた1からやり直せば……」
「あまいよ!
森の外でどの位時が経過しているかも全く分からないし、道が崩壊してるってことは森の外への影響だって少なからずあるだろう。
道の崩壊は森の崩壊とも言えるからね。
森が全て無くなれば、2度と魔王を倒すチャンスは無い!
それどころか森の外まで崩壊が侵食してきて、結局皆殺しにされるかコレクションにされるかもしれない。
同じ結果になるなら最後まで抵抗したい!
兎に角魔王が生き続ける限り何の解決にもならないと思わないか?
僕達には魔王を導く力も余裕も無いし……」
と言いながらスウィンも、森を出る選択がベストかもしれないという思いが頭を過ぎる。
魔王を倒すなんて到底無理だと納得せざるを得ないから。
既に3人の会話は全員に伝わっていたが、誰も良い解答を出すことは出来なかった。
皆、迷い焦り苦しんだ。
そうこうしているうちに、道の崩壊はどんどん近づいてきていた。
おまけに魔王の力が、まだ無事な道の中にもジワジワと浸透してきていることには誰も気づいていない。
当然、自分達の身に変化が現れ出していることにも。
身体の動きは鈍くなり、話はスローになって、思考能力も減退してきていることに気づけるのは、相対性が有ればこその話だ。
全員が同時に同じ変化をしている以上、誰にも気づかれない。 当たり前のことだ。
そして、皆一斉に静止し、コレクションされるのだろうか………
だが、ただ一人皆と同じ変化をしない者があった。
あの半透明人だ。
彼は、成り行きを冷静に見守っていた。
キララが、繋いでいるスウィンの手をギュッと握りしめた。
「怖い………」
キララの潤んだ瞳に深い恐怖の色が浮かぶ。
「大丈夫! 僕が守る!」
そう答えるしか無いスウィンも不安で喉がカラカラだった。
いつの間にかポロンもスウィンの肩に座り込んでブルブル震えていた。
そんなポロンをハックが盛んに励ましている。
常にスウィンの胸元に居られる安堵感からなのか、ハックは可也落ち着いていてキララや子供達にも励ましの声をかけていた。
「どうする?!どうする?!どうする?!」
ブラックが大声を張り上げた。
「兎に角、走らなくても良い! 考えながら道を戻り続けよう。
みんな、そろそろ動けるか〜?!」
ブラックの呼びかけに皆無言で頷き歩き出した。
そして全員が一心に手立てを考えた。
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