第30話
【1】
レディ ミラーのドレスの裾にカチヨンの指先が触れようとした瞬間、なんとカチヨンが消えた。
そして、その姿はレディ ミラーのすぐ隣りに有った。
しかも驚きの表情のまま静止している。
生きもの梯子が総崩れした。
「なんてこと………」
ケラケラはそう呟きながらカチヨンの心に語りかけてみたが全く反応が無い。
「カチヨ〜ン!」
皆必死で呼んだ。
子供達は泣き出した。
7人の猫達は、何度も何度もカチヨンの名を呼び、最後には地面に崩れて号泣した。
暫く全員の泣き声が響いていた。
と……、急にブラックがその精悍な顔をスクッと上げて、何か決意したように表情を引き締めた。
リーダーカチヨンが不在になったこの集団を守り引っ張っていくのは自分だと自覚したようだ。
そんなブラックを見て、スウィンは頼もしく思い安堵した。
スウィンもまたカチヨンの後を引き継ぐのはブラックしか居ないと感じていたから。
「魔法の力が及ぶ範囲を少しでも越してしまうと、あっちの世界に引き込まれてしまうということだな………」
そんなブラックの話が終わるか終わらない間に、ポロンがスゥーッとカチヨンの近くまて飛んで行った。
「ポロン! 危ない危ない!」
「大丈夫!
此処がギリギリだと思う。
この辺から何かちょっと空気が変わってる感じ」
と言ってポロンが浮遊して示す場所は、レデ ィミラーのドレスの裾先から30㌢程下だった。
と言うことはカチヨンもその不穏な空気を感じていただろう。
皆改めてカチヨンの勇敢さを思った。
「あ〜っ、もうダメ!」
ポロンは怯えた青い顔をして、ツーと降りて来た。
「さっきの場所あたりから、とっても危険!
あれ以上1㌢でも上昇してたら私も引き込まれてたわ!
指先1本でも境界線を出れば、簡単に引き込まれてしまうと思う。
そんなエネルギーを感じさせる不穏な空気だった。
魔王の力……みくびれない。
どんな強い力でも抵抗出来ないかも……」
「カチヨンは思いっきり境界線を飛び越えてしまったわけだ………
あちら側からこちらの保護スペースに引き込むことは、完全に無理ってことだな………」
ブラックは途方に暮れた様子だったけれど、流石に新リーダー!冷静に成すべきことを探り始めた。
そんなブラックを見ていて、誰もが励まされ勇気づけられた。
一気に皆で新リーダーを支えようという空気が充満した。 子供達さえも。
「みんな! 聞いてくれ!」
ブラックの声に皆心が引き締まる。
「カチヨンのことは残念だし悔しい!
でも此処でへこたれたらカチヨンの犠牲が無駄になってしまう!
それにカチヨンは生きてる!
あんな姿でもしっかり生きてるんだ!
カチヨンだけじゃ無い! 今や動かなくなった流れる者達全てがまだ生きてる!
我々は彼等全員を救う! 魔王を倒す!」
「ウォ〜!」
不気味な荒野に凄まじい程の大歓声が響き渡った。
万単位の群衆にも感じられる程。
カチヨンの犠牲は、皆の結束を強くした。
「俺は、カチヨンに何かあった時、カチヨンの代わりに君達を守り引っ張って行くようにとカチヨンから言われている!
だからこれからは俺がカチヨンの代役を務める!
カチヨンと同じようには出来ないと思うが精一杯やる!
だから協力頼む!」
ブラックは深く頭を下げた。
「おぉ〜!」
またもや大歓声!
「正直、何をどうしたら良いのか全く分からなん!
たぶん、考えれば考える程分からなくなりそうだ!
ただ急いだ方が良いことは分かる!
だから兎に角急ごう! 急いで進もう!
終点があるか否かも分からないが、此処にとどまっているわけにはいかない!
行くぞ〜!」
「わぁ〜!」
再び歩き出した。
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