第23話
【1】
スウィンは、ハックとポロン、キララ、ヘンカジン、そしてケラケラ隊の比較的幼く見える者達と語り合った。
ハックが勾玉から抜け出て、一番幼そうなケラケラ隊員とずっと話している。
ハックと緑色の子供を見ていて、スウィンはふと気がついた。
「彼等の言葉が分かったのかいハック?
さっき、翻訳機能伝達の時、君に伝達するの忘れてたよ僕………」
「だって私、ってか正確には勾玉状態の私がスウィンの胸に触れていたから大丈夫!
伝達されましたよ」
「あっ、それで良かったんだね…… なぁ〜んだ!」
「なぁ〜んだ!って…… 私は忘れられたんですね………
しかも今まで思い出して頂けなかったんだ………」
ハックが
「あ〜ごめんごめん!そういうわけじゃ……」
「そういうわけでしょうが!」
ハックが口を尖らせてスウィンを睨む。
「はい、そういうわけです。 ごめんなさいm(__)m」
ハックもスウィンも大笑いして周囲の子供達を巻き込み場を和ませた。
「これから先もまた何かあるのかしら?」
キララが不安げに呟いた。
それを聞いていたケラケラ隊の子供達も不安がり出した。
「大丈夫よ!
身体は小さくても、勇敢な連中ばかりじゃない!」
ポロンがキララを叱りつけた。
「でも勇敢なだけじゃ………」
「駄目だと思っていると駄目になるのよ!
うまくいく! 大丈夫! って思っていれば、そうなる道が開けていくものよ!
心の中に不安があっても、絶対口に出しちゃ駄目よ!
もし今後マイナスなことを言った時のために、何か罰ゲームを考えておくわ」
ポロンはドヤ顔で子供達を見回した。
「分かった……」
キララは半分泣きそうになりながら渋々了解した。
子供達も頷く。
その様子を見てポロンは、あり得ない程明るく言い放った。
「だ•い•じょ•う•ぶ!!」
昆虫みたいに小柄だけどポロンは大人だと、スウィンはつくづく感心した。
「さぁ、そろそろ出発だ!」
カチヨンの声で皆立ち上がった。
引き締まった表情が覚悟と闘志を顕わにした。
キララや緑色の子供達でさえ凛々しい。
しかし流石にトンネルの出口まて来ると全員足が止まった。
先頭のカチヨンもなかなか外への一歩が出ない。
カチヨンは晴天の空を眺め、それから川が問題無いかを確認し、キョロキョロと周囲を警戒して、パワーアップにひとつ大きく息を吐いてから一歩を踏み出した。
大丈夫! 何も起こらない!
そのまま皆ゾロゾロと歩き出す。
暫くはピリピリと警戒する全員のエネルギーが空気を濁らせていたけれど、程良い湿気に清められた清々しい道を歩きながら、徐々に警戒心も薄れていった。
心地良い微風に包まれて様々な形と大きさの岩を抜け、虹色に輝く道に
空は青々と晴れ渡り、雲一つ無い。
ただ、相変わらず光源が見つからない。
あまりにも明るい空自体の輝きが光源を見えなくしてしまっているのだろうか。
岩々の大きさと形が険しくなっきた。
川の流れも激しさを増し、ゴーゴーという音が響いている。
水面はその激しさを表す白色が多くなってきた。
そして………誰か気づいているだろうか?
ケラケラ隊員の中に、他の誰とも姿形の違う半透明な者が一人一緒に居ることを。
彼は見えたり見えなかったりしているし、見えても霧に包まれたように
しかし、人間の大人の男性に近い容姿であるような感じはする。
彼から誰かに話しかけることも無く、誰かが彼に気づくことも無い。
ただモ〜ッと皆の中に居る。
一緒に行動しながらも、あまり他と関わらないようにしているようだ。
関わったところで怖がられるのがオチかもしれないが。
でも、こちらの声や音は聞こえているらしい。
話の内容を理解している気配もある。
何故なら、それなりの反応をしているからだ。
例えば誰かが「あっ!」と言って何処かを指差せば、半透明な彼も必ず指差す方を見る。
誰かの話に頷いていることもある。
けれど、彼の存在を知る者は誰も居ないようだ。
しかし時々、半透明な彼がスウィンにはすぐ傍まで寄っていくことがある。
そんな時スウィンは決まってキョロキョロ周囲を気にしたり、自分の身体を手で払ったりする。
スウィンだけは何かを感じているようだ。
だが、半透明な彼の存在を認識してはいない。
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