第20話
【1】
通訳と言うよりテレパシーに近い。
レディ ミラーやパンの場合と似た感覚だ。
緑色の彼は、直接頭に語り始めた。
「
「森ですが……貴方は何処から来たんですか?」
「よく分からないんです。
気がついたらあの中に……」
と言って緑色の彼は出て来た岩を指差した。
割れた岩の灯りの中からは、既に無数の緑色族達が顔を出している。
「何処の住民かも覚えていないんですか?」
「はい」
緑色の彼は申し訳無さそうな表情をした。
「じゃぁ魔王のことも御存知無い?」
「魔王…ですか………?」
カチヨンは、魔王のことやカチヨン隊の目的などを
緑色の彼はイマイチ腑に落ちない様子だった。
「どうします?
我々はすぐ出発しなければならないのですが、一緒に来ますか?」
「ちょっと待って下さい。 皆と相談してきます!」
緑色の彼は救われたように晴れやかな表情をしてそう言ったけれど、カチヨン隊にはあまり余裕が無い。
「お待ちしたいのですが、我々は急がなければなりませんので、先に出発します。
決心がついたら兎に角この道を進んで下さい。
この道から外れなければ我々と合流出来るでしょう。
いいですか! この道から外れたら大変なことになりますからね!」
緑色の彼はちょっぴり不安そうだったが、慌てて仲間の所へ戻って行った。
カチヨン隊はそれを見送るとすぐ出発した。
「彼等は何者なんだろう………?」
「私にも分かりませんが、実はあんな感じの者達をけっこう知ってるんです」
「緑色の小さい種族ですか?」
「いやいや種族は様々ですが、あんなふうに自分が何処から来て今は何処に居るのか、果ては何者なのか?と尋ねる客人が、カチヨン城に度々来るんです」
「**変化**なんてことが有る以上、自分の存在意味すら分からなくなるのも当然だけど……」
「私も始めの頃はそう思ったりしたんですが、それにしては**変化**前の記憶が無さすぎるし、どうも**変化**してるわけでは無さそうなんです。
先程の彼等だってそうだったでしょ?」
「たしかに……」
「彼等が私達と合流出来たら、じっくり話をした方が良いかもしれないなぁ………」
「カチヨン城に来たそういう者達は、その後どうなったんです?」
「暫く滞在して去って行く者が殆どだったよ」
「あぁ〜!」
突然スウィンの胸元で甲高い声がした。
ハックだった。
勾玉から身体半分抜け出したハックが指差す方を見ると、川の上に虹が出来ていた。
「うわぁ〜!」
ポロンも叫んだ。
皆立ち止まって見惚れている。
と……あれっ?
「あっちにも!」
「あっ、こっちにも!」
「あぁ〜、凄い!凄い! 虹がいっぱい!」
虹は次々と生まれて、川、道、岩々、空の彼方まで虹に埋め尽くされていた。
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