第12話

        【1】 


「探すって言っても…… 東へ東へと進めば良いの?」


「確かに此処までは東に来たと思います。

でも此処からは東とは限りません」


「東とは限らないって、あっちこっち行くんですか?」


「まぁ、そうとも言えますけれど…… この辺から不安定なエネルギーに満たされていると先程言いましたが、方向も定まらないんです。

東に向っているつもりで、着いたら真西だったり、北や南だったり…


でも大丈夫! アナタ方が此処まで来た道をそのまま辿れば目的地に到着します」


「へぇ〜! 不思議な道なんですね」


「遥か昔、何者かが作った道らしいのですが………

私の先祖かもしれません」


「預言者の先祖なら魔法が使えるかもしれないしね……


でも……そんな不確かなことをするより、来た道を戻って魔王を倒すことを考えた方が良いんじゃないですか?」


「それは無理よ!」


「そう、それは不可能です」


「そんなに強いんですか?」


「強いと言うより魔王は何処にでも移動出来るし何処にでも居るんです。

魔王の中で私達が生きていると言っても良い!


「魔王の中で生きている………?


つまりこの森が魔王で出来ている?」


「そう言っても良いかもしれません。

恐らく今も私達の話を聞いているでしょう」


「僕達は魔王の一部だということですか……?」


「一部ではありませんが、それに近い囚われ方です」


「ってことは、どんなに僕達の悪口を聞いていても、別にどうってこと無いわけだ」


「そうです。


ですからレディ ミラーがどんなに逃げても、母上を助けても、何の解決にもならないんですけれど………


魔王は私達が狼狽えているのを楽しんでいるようです」


「解決にはならないかもしれないけど、レディミラーにしても女王様にしても身動き出来ないコレクションの一つよりはまだマシということか……」


「そうなんです。


動くことが出来れば何とか良いチャンスを得られるかもしれませんからね。


早速出かけましょう!」


                        


プリンス カチヨンの家来は僅か7人だった。

以前は数十人居たらしいが、これまでの間に容姿が極端に変化したことに狼狽え去って行ったり、別行動をとっているうちに戻らなくなったりしたらしい。


残った7人の中で5人はカチヨンと同じ猫、一人は人間と猫をミックスしたような奇妙な生き物、あと一人は人間になったり猫になったり忙しく変化している。


5人の猫達は、いや5匹と言うべきなのか、一応人間のように話すし思考するから取り敢えず5人の猫達はそれぞれ茶色1色、黒1色、灰色1色、茶と黒と白のブチ模様、カチヨンと同じ白の額に太い茶色の縦線が入った者達で、皆精悍な眼差しをしていた。


人間と猫のミックスは黒猫とのハーフらしくて、けっこう若そうだ。


盛んに変化中の彼は、この中でスウィンの次に若いというか幼そうで、可哀想に自分の状況にひどく狼狽えているらしい。可也おどおどしている。


取り敢えず猫氏達に重い荷物が持てる筈も無い。

結局食料など全ての荷物は、猫人間と変化人とスウィンが持つことになった。

スウィンだってまだ8歳なんだけれど………

とは言え、猫氏達と妖精の食料は僅かで済むし、道沿いに生えている果物も食べられる。

あちこちに川等の水源がある為、水分補給にもも事欠かないようだ。


兎に角、状況からして急いで行動した方が良いことは確かだ。


「ゆっくり寛いで頂くことも出来なくて、たいへん恐縮なのですが、すぐ出かけましょう!」


カチヨン城に着いたら、まずお城を見学して、それから晩餐を堪能しながら美しい音楽や舞踊を楽しんで……なんてこともちょっぴり期待していたスウィンは少しがっかりしたものの、この状況では一刻も早い行動が求められることくらい8歳の子供にも理解出来る。

しかも髭爺さんゆずりの正義感にも火がついたようだ。


「よし! 出発だ!」

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