第11話

        【1】


ゴシック様式の教会を思わせる内装の荘厳な広間を堪能しながら時間をかけて進んだ3人は、玉座の前まで辿り着いて一斉に声を上げた。


「ね、ねこ……?」


「ようこそお越しくださいました。


カチヨンと申します。


永い間お待ちしていたのですよ」


「永い間って……僕達が来ることをずっと前から知っていたのですか?」


「はい」


スウィンが生きていた世界よりうんとゆっくり時が流れているこの世界での永い間って、どの位なのだろう………

その間にスウィンの生きていた世界で過ぎた時間は………?


スウィンは目眩を感じてプリンスカチヨンの待っていた時間を聞くことを躊躇った。


「私がまだ人だった頃からです。

母上、つまり女王も……」


預言者カチヨンには、こちらの心などお見通しのようだ。


「女王様は此処にいらっしゃるんですか?」


「母上は私と同じ猫の姿になってすぐ魔王に囚われ、まだ行方知れずなのです。

魔王は美しいもののコレクションをしているらしいのです」


「じゃぁ、レディバック、いやレディミラーも?」

 

「レディミラーもコレクションに加えられそうになって、ずっと逃げ回っています」


「えぇ、そうでした。

レディミラーから此処へ来る道を教えてもらったんです」


「そのようですね。


美しかった母上も恐らくコレクションの一つにされていることでしょう。


私は母上を助けたいのです。

でも魔王の力は私一人で立ち向かえるものではありません。


それで、アナタに協力して頂きたいのです」


「協力って……… 僕達に何が出来るんです?

髭爺さんを探しに行くだけですよ」


「分かっています。

髭爺さんを探しに行く方向にコレクション達をとどめておく場所が有るらしいので、兎に角其処まで一緒に行って………」


「場合によっては一緒に戦う?」


「まぁ………

戦いがどんなものになるのか私にも全く解りませんけれど、アナタ方が救世主であると私の魂が教えてくれているんです」


「王子様は預言者だって言ってたもんな………


8歳の僕と小さな妖精達に戦いなんて無理だと思うけど、たぶん気が遠くなる程の時間僕達を待っていてくれたんだろうから、仕方ないか………」


「あら、妖精をナメないでよ!

人間なんかよりいろんな事が出来るんだから!」


ポロンが初めてプリプリした。


「あぁ ごめんごめん!

じゃ、決まりだね!」


「皆さん、本当に有り難う!」


「ところで、『人だった頃』があったとおっしゃいましたね……どうして猫になったんですか?」


「実は私にも解らないのです。


此処はとても不安定なエネルギーに満ちていて、物の形をとどめておくことが難しいのです。


魔王の力で変わることもありますが、新たな動きがあった時、例えば此処の住人では無い者が訪れた時にも変化します。


母上と私が猫になった直前、母上と私は同時にアナタ方が来ることを感じました。


私達が予言する時は、予言することが起きている時間と場所に魂の瞬間移動をするので、

実際より早く新たな動きに魂を委ねることになり、姿も変化したのだと思います。


自分の気持ちの動きで形が変化することもあります」


「あっ、それそれ!私がそれ!」


ポロンが嬉しそうに叫んだ。


「そう言えば、初めてポロンに出逢った時、3人の妖精が現れたり消えたりしてたのがそれ?」


「そう! アレよ!」


「みんな凄く綺麗だった!」


「あら、有り難う!


でも、じゃぁ王子様はまた別物になるかもしれないってことですか?」


「はい、近いうちにまた」

 

「そうか………

王子様達が人間の姿だったのもたまたまだったんですね…


人間の姿はずっと続いていたんですか?」


「人間の前、形は人間に似ているけれど人間とは明らかに違う、爬虫類と人間のハーフのような姿が永く続いていました。

その頃から、私の魂に呼びかける声が聞こえており予言も出来ていたのです。


でも、その姿が本当の姿かは分かりません。

真実の姿が知りたいのです」


「じゃぁ、それも探しましょうよ!

私も他人事じゃ無いわ!」

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