第10話
【1】
「私はプリンス カチヨンをお守りする門番です」
「プリンス カチヨン? 門番?………
門番って、もっと厳しい兵隊さんじゃない?」
「此処に兵隊は居りません。
戦争そのものが無いのです。
何故なら、アナタが弾き飛ばされた透明な壁が、よそ者の侵入を遮断してこの国を守っているからです。
私が壁を開かない限り、何びとたりともこの国に足を踏み入れることは出来ません」
「さっき貴方は**ようこそ**って言ったよね。
ということは僕達は入れてもらえるの?」
「勿論です。
プリンス カチヨンはアナタ方の到来を既に知っておいでです。 髭爺さんのことも。
プリンス カチヨンは偉大な預言者ですから。
他の者の侵入を避ける為に、すぐ壁を閉じなければなりません。
さっ、早くお入りなさい」
門番は、カーテンを押さえるような仕草を保ちながら3人を招き入れた。
「あちらに見えるのがプリンス カチヨンのお城です。
どうぞお訪ねください。
プリンス カチヨンはアナタ方の到来を心待ちにしておりました」
スウィン達はプリンス カチヨンの城へと向って進んだ。
「ポロン、プリンス カチヨンのこと知ってた?」
「噂は聞いたことある。
賢くて美しい王子様だと言われているわ。
でも会ったことは無い。
たぶん会ったことが無いのは私だけじゃ無いと思うよ。
だから伝説の人物だと思ってた。
ハックは知ってた?」
「僕も話は聞いたことあるけど、会ったことは無い。
こんな壁で閉ざされていたら当然だけどね」
「ってことは、僕達がこの国に入れるのは本当に特別なんだね………
カチヨンが呼び寄せた可能性だってあるかも………」
城は東側にあるので、3人が向かう道をそのまま進めば良かった。
僅かな凹凸の有った道が、この国に入ってからスベスベの平らになり、相変わらずパールを帯びて輝いている。
「わぁ!綺麗!」
ポロンの歓声で皆一斉に西側へ目をやった。
其処は素晴らしい眺めだった。
彼方にまで続く神秘的な山々……
白く輝く滝……
清らかな谷川……
3人とも暫く声も出せず呆然と見惚れていた。
「スウィン、急ごう!」
胸元でハックの声が叫んだ。
スウィンもポロンも、ようやく夢から覚めたように目的を思い出した。
再びプリンス カチヨン城に向って進む。
道は森を抜け、色とりどりの花達に囲まれて、楽しげに続いている。
3人とも散歩でもするようにワクワクして歩いた。
パールの道は移ろう虹の輝きで3人を歓待している。
歩く靴の音と共に、道が奏でる心地良いメロディが流れた。
それは柔らかいハープのような音で、城が近づくに連れ確かな調べとなった。
目の前にプリンス カチヨン城の大きな入口が聳え立った。
3人が歩みを止めると、荘厳な扉がゆっくりと開く。
広大な広間の遥か奥の玉座から、スウィン達に呼びかける者があった。
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