第3話
【1】
「ねぇ、私ポロン。 君の名前は?」
少年は目を見張った。
目の前にキラキラの靄がフワリと浮かび、その中で中指程の妖精が幻想的な美しさで輝きながらゆったり羽ばたいている。
しかも、少年をじっと見つめ話しかけているのだ。
妖精の美しさは並大抵のものでは無かった。
その羽はステンドグラスのように多彩で、輝きながら羽ばたく度にポロンポロンと可憐な音がする。
ーーー彼女のポロンと言う名前は、羽ばたきの音色からきているのかもしれないーーー
などと感心していると、妖精の姿が少しづつ変化してきた。
次第に、氷のような神々しい程美しい姿になり、相変わらず理知的な視線を少年に注いでいる。
あまりの美しさに少年は思わずはにかんだ。
「ぼ、僕はスウィン……」
と、か細い声で呟く。
「スウィン? なんてステキな名前なんでしょう!」
そう言いながら艷やかに微笑むポロンは、再び姿を変えた。
今度はリンドウの化身のような姿だ。
ポロンの感情の変化がその姿を変えさせているのだと、スウィンは後から知った。
初めて人間の少年と関わったポロンは、この時とても緊張していたし動揺も有ったので感情の起伏が激しく、結果姿の変化も著しかったのだ。
「スウィン………
風のように軽やかな名前ね………
でも今君の心は……この世の真理ほどに複雑で重い………
森の中が怖い?
怖いけど中に入って自分を消し去りたい………?
でも、それは無理よ。
だって森は呪われてなんかいないんだもの。
ただ、森の奥の奥に、此処とはちょっぴり違う世界へ繋がる道が有るけど………」
「此処と違う世界?」
「えぇ! 髭爺さんが居る世界!」
「爺ちゃん? 爺ちゃんを知ってるの?」
「もちろん! 君のことも髭爺さんのことも全て知ってるわ」
「爺ちゃんは死んだんだよ!」
「この世界ではね……」
「………………」
「中へ入ってみる?」
「……うん……… 爺ちゃんを捜せる?」
「もちろん!」
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