第2話

        【1】


あの世界の彼等と言えども、人間界の時間の流れには逆らえない。

多くの者が人間界では人間と同じように成長し歳もとる。


でも冒険を終えてあの世界に戻れば、出て来た時と殆ど変わらない時間が流れていることになる。

だから彼等は人間界を訪れる時、妖精の力を借りる。

妖精の輝く羽から溢れる粉を浴びると、時間を制御出来るから。


妖精達は自ら時間の制御が出来るので、人間界に永く滞在する者もあった。


人間との接触はタブーだったけれど、稀に人間と関わったりもした。


この森の奥深くまで人間が入って来ることは無いので、妖精達の方から人間の居る街へ出かけるのだ。


ある妖精が、森の近くで少年に出会った。

孤独で美しい少年だった。


妖精は一目でその少年を気に入った。


                       


少年は髭爺さんと石の家で暮らしていた。


石の家は森の見える場所に有り、二人は森と共に生きていた。


ただ、森の中は呪われた世界だから入ったら最後 二度と戻っては来られないと髭爺さんは少年に言っていた。


だから少年は森に憧れながら、一度もその中に足を踏み入れたことが無い。


                       


昨日髭爺さんが死んだ。


少年は途方に暮れ、森の傍でウロウロしていた。

その姿を見たのが妖精ポロン。


                        

少年はたった一人残されて生きる気力も失い、自暴自棄になっていた。


髭爺さんが教えてくれた様々なことに思いを巡らし、でもたった一人で何が出来るんだと自問自答しては虚しさに項垂うなだれていた。


いっそ呪われた森に入って、バラバラになってしまいたいと思いながら、それでもまだ迷っていた。


                      

ポロンはそんな少年の全てを知っていた。

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