第4話

好き、好き、好き…結城くんが好きだよ。


ずっとずっと近くにいたかった。


”また明日”わたしもそう答えたかった。


当たり前のように毎日が来て、結城くんがわたしの名前を呼んで、わたしも部活を続けていて、たまにすれ違う時にお互いを応援する、そんな日常は二度とないんだ。


もう、会えない。


これから成長する結城くんを見れない。


走馬灯のようにこれまで過ごした時間を思い出した。


最後に、最後にいちばん伝えたかったのは、さよならじゃない…”好き”の言葉だった。


伝えたかったのに、最後まで言えなかった。


―――鞄を持って教室を飛び出す。


結城くんに気持ちを伝えるためじゃない、ここで泣いていることが結城くんに知られないために―――……











次の日、果歩の転校を知った俺は、最後に見たあいつの笑顔を思い出す。


―――…後悔ばかり、浮かんで消えた。


『果歩、また明日な』


『―――……っ』


笑った果歩は、泣くのを堪えた笑顔だった。



END 2016.5.18 華

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言えないさよならを飲み込んで【完結】 広瀬可菜 @hirosekana2024

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