第7話 下校友達
公園入り口に蠢く《影》。さっき《怪談》を引き剥がした時にその中に見えた物がある。Nintendo Switchだ。僕は知っている。外にNintendo Switchを置き忘れるのがどんな子供なのか。誰とも遊ばず、遊べず。忘れた事に気づかせてくれる友達もおらず。きっとそれは、僕のような子供だったんだろう。
「友達、欲しかったんだよな。僕が君と遊ぶよ」
《影》が晴れていく。《影》を《憑代》から離れさせるには説得がある程度の効果を発揮するらしい。友達が欲しかったというのは図星だったんだろう。破壊するのは色んな意味で心苦しいがこのNintendo Switchも壊さなきゃなるまい。
拾い上げて気づいた。モニターの裏側にあたる本体の背、そこに名前が書いてある。
「ゆかり……?」
持ち主の名前だろう。女の子かな。
「あの」
「ああ。壊すんだよね、これ」
「あの。多分それ、私の」
「はあ?」
「ゆかりって、私の名前……。でね。あのね。昔ね。友達が欲しくってね。持ち歩いてたの。でもずっと一人でさ。いつの間にか無くしちゃってた」
なんだ。この子もか。じゃあさっきマイナス思念の《影》が晴れたのは。
「きっと。嬉しかったんだと思う。昔の私が。遊んでくれるって聞いて」
なるほど。は?てゆうかアレ、君のマイナス思念?それどんなマッチポンプだよ⁉︎僕を巻き込んでさぁ‼︎
……まあ。いいか。少し。本当に少しだけれど楽しかったし。
「あのさ」
だから。今度は僕の方から。
「僕は見鬼(みき)才之(としゆき)。ゆかりちゃん、友達になってよ」
ゆかりちゃんはNintendo Switchを軽く放って。また何処かから持ってきていた鉄パイプで粉砕した。
「い、いいけど?私はーー」
背を向けたまま言いかけ。
格好をつけて振り返り。
やっぱり転んだ。
「妖怪(あやしげ)ゆかり。よろしく」
助け起こして。それが握手みたいな形になって。
こうして僕に友達が出来た。
※
プレイリストを聴き終えた後にサブスクが勝手に流すオススメ曲が好きだ。自分が選んだ訳でもない曲が脳を走って時々は何かが引っかかる。
僕に友達が出来た。
それは僕の生活というプレイリストにはない事件だったけど。
きっと気にいる。気にいると思う。
《下校狩り》 黒猫扇子 @Bekkener
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