第2話
「おはようございます。」
「伊藤先生、おはようございます。」
鞄を置いて、今日と明日の予定を確認する。
「うーん、やっぱり厳しいなぁ…。」
どう頑張ってもなんとかできるような状況じゃない。
無理やり何とかするしかないか。ほかの先生方に迷惑かけてしまうが、自分のこの
嫌な感じを見逃すのはよくない気がしていた。
「伊藤先生!おはようございますー!今日も早いですねぇ!」
綺麗な黒髪を束ねながら、僕に近づいてくるのは同じ学年担当の相沢先生だ。
一つ下の後輩だけど、生徒からの信頼は厚いしコミュニケーション能力も高い。
「相沢先生、おはようございます。申し訳ないんだけど、ちょっと相談が…。」
僕の暗い顔を見たからか、ちょっと口角が下がった。
「どうしました?」
「実は親が倒れてしまったみたいで、有給がほしいんだけどさすがに調整しないといけなくて…」
朝から続く嫌な感じとは別に汗が出てくる。申し訳ない気持ちはあるが優先順位ってものがあるからなぁ…
「それは大変ですね…。もう教頭先生にお話しなられましたか?」
「いや、まだ…きっと有給になったら僕のクラスをみてもらうのは相沢先生になると思ってさきに伝えようとと思いまして…。」
相沢先生はいつもの顔に戻った
「大丈夫ですよ、私が困ったときは伊藤先生がよろしくお願いします。」
「ありがとうございます。」
お礼を言って、有給の申請をするために席を立つ。
(うわぁ…ハンカチもっていこう…)
いわゆるずる休みをするために嘘をつくのは社会人になってから一度もない。
僕の汗腺はねじが外れたみたいに罪悪感と焦りがにじみ出ていた。
忘失 @yanagisi
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