第13話

体を更に膨らませて古い本を拾い上げる右京を睨んでいると溜息を吐く。




「酒は汚れを浄化する。みたところこの汚れはかなり絡みついている。無理やり俺の力だけで引き剥がすには烏の体には負担が大きい。そこで狸の山で出来た浄化作用の高い酒を使う」




 ポカンと嘴を開いて話を聞いていると右京に額を弾かれ尻もちを着く。



 驚きながらも別のことに深く納得していた。右京が毎日のように酒を飲んでいることだ。



――毎日酒を飲んでも右京の汚れは浄化しきれないんだな



 翼で嘴を隠して笑っていると右京が徐に顔を近づけ目を細める。




「もう一つ良いこと教えてやろうかと思ったけどやめた」



「えっ?! なんだよ良いことって! 知りたいです。聞かせてください師匠さま!」



「全く調子のいい奴だねえ」




 大袈裟に溜息を吐いて右京は首を横に振るが、俺だって溜息を吐きたい気分だ。



 それを堪えて努めて真剣な眼差しをむけて右京の言葉を待っていると、口の端を上げいつもの意地の悪い笑みを見せる。




「もう少し。しばらくは此処で大人しくしてな」



「なんだよそれ!? 頼み損した……」




 不満足な答えについつい本音が口を衝いて出てしまい慌てて嘴を閉じて右京を上目使いで伺う。



 時既に遅し。意地の悪い笑みと指先が伸びている最中でピンと額を強めに弾かれ一回転して尻もちを着いた。

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烏のプロポーズ 弐 直弥 @ginbotan

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