《第1話のシナリオ》

振り子時計が時を刻んでいる。


銀色の毛がひらひらと絨毯の上に落ちていく。


モーラ・ロマネッタとファル・ロマネッタが、くすくす笑っている。


モーラ「あら、さっぱりしたじゃない?」


ファル「髪の毛が長いと仕事の邪魔ですものね」


二人の手には、ハサミが握られている。


床には、髪の毛が散乱している。




執事服を着たオルバ・ロマノスが、給仕服を着たラーニャ・ファナットを押さえ込んでいる。


銀髪で赤い瞳。眼帯をしているラーニャは、豪華なドレスを着たモーラとファルをキッと睨む。


《ファル・ロマネッタ》《15歳》《7月8日生まれ》《人間(ハルヴァス)》《ロマネッタ家・次女》


ファル「姉様。折角、私たちが髪を切ってあげたのに。この子ったら、何か不満があるみたい」


《モーラ・ロマネッタ》《19歳》《3月28日生まれ》《人間》《ロマネッタ家・長女》


モーラ「そうね」


《気が強くて我が儘》《盾突く相手には容赦しない》


ファル「これは、お仕置きが必要のようね」


ファルは、オルバに視線を送る。


オルバは、ラーニャの指を折る。


『ボキッ』と鈍い音。


ラーニャは、激痛に耐える。


《他者が苦痛に耐える姿に興奮する変態》


ファル「わぁ、痛そう」


《相手よりも優位な立場にいないと気が済まない》


ファル「ねぇ、お姉様。見て、この不細工な顔。この子には、お似合いじゃなくて?」


《妹には逆らえない》《機嫌を損ねないように調子を合わせている》


モーラ「まったく、あなたはお馬鹿さんなのかしら。この間、酷い目に遭ったばかりだというのに」


《家族から疎まれ、息苦しさを感じて生きている》


モーラは、ラーニャから視線をそらす。


ファル「お姉様の言うとおり、半妖ルガルタは馬鹿ばっか」


ファルは、ラーニャの眼帯に触れようと手を伸ばす。


誰かが扉をノックする。


モーラ「誰?」


?「ルナ・ファリスです」


モーラ「入って」


ラーニャは、ファルの手に噛みつく。


扉が開き、給仕服姿のルナ・ファリスが入ってくる。


ファルは、カッとなって持っていたハサミでラーニャの目を突こうとする。


ルナ「お嬢様方、奥様がお呼びです」


ファルの手がピタッと止まる。


ファル「あら、残念」


ファルは、握っていたハサミを床に刺す。


モーラは、小さく安堵の溜め息を漏らす。




ファル「また今度、遊びましょうね」


《半妖虐めがストレス解消》


ファルは、満面の笑みでラーニャに手を振り部屋を出て行く。


《人が傷つく姿は見たくない》


モーラはちらっとラーニャを見つめファルの後を追いかける。


二人の背中に向い、ルナとオルバはお辞儀をする。


《ルナ・ファリス》《32歳》《4月2日生まれ》《人間》《ファリス家の跡取り娘》《品行方正で優秀》


ルナは、溜め息を漏らす。


《冷静沈着》


ルナ「さて、ラーニャ・ファナット。綺麗に掃除しておいて下さいね」


《冷酷非道》


ルナは、地面に倒れているラーニャを冷たい視線で見つめる。


《オルバ・ロマノス》《27歳》《6月4日生まれ》《人間》


オルバ「お前も強情だな。素直に従っていれば、こんな目に遭わずにすんだのにな」


《元チンピラ》《犯罪歴、多数》《ロマネッタ家では、汚れ仕事専門》《力のある者には、絶対服従。命令されればどんなことだってする》


ルナ「無駄話をしている暇があったら、あなたも仕事に戻りなさい」


《完璧主義者》《仕事に手を抜く者は許さない》


オルバ「はい、はい」


《気の強い女性が好み》




ルナが部屋を出て行こうとする。


オルバが、部屋の扉を閉めルナの前に立ち塞がる。


《無類の女好き》


オルバ「ねぇねぇ。今度の休み、暇?」


《しかし、金持ちに限る》


ルナ「あなたも見境ないですね。他の子たちにもそうやって近づいているのですか?」


《軟派な男は、生理的に受け付けない》


オルバ「これは手厳しい」


《守備範囲は広く、ダリス・ロマネッタも狙っている》


ルナ「残念でした。その日は、仕事です。他を当たってください」


《ダリスの夫。ロマネッタ家の当主であるエドガー・ロマネッタの愛人》《地位や名誉がある男性しか愛せない。それ以外は、クズだと思っている》


ルナは、オルバを冷ややかな視線で見つめ部屋を出て行く。


扉が閉まる。


オルバは、口笛を吹く。


オルバ「たまらないね」


オルバは、ラーニャの腹を蹴る。


ラーニャは、悶絶する。




■半妖専用屋敷


ロマネッタ家の敷地内にある小さな屋敷。


屋敷を囲むようにガラクタが積まれている。


窓ガラスは割られ、板で補強。外壁は、油で汚れている。




室内は、ガラクタが占領している。


ガラクタからは、油が滴っている。


その中には、絡繰り人形アーキアの残骸も含まれている。




厨房。


金髪の天然パーマ。


渦を巻いた角を生やしたキアル・ノートンが、ラーニャの折れた指を手当てしている。


ラーニャと同じ給仕服を着ている。右腕は義手。


《キアル・ノートン》《18歳》《2月7日生まれ》《半妖》


ラーニャは、痛みで顔を歪ませる。


《世話焼きの心配性》


キアル「我慢しなさい。あなたが悪いのだから。黙っていれば、髪の毛を切られるだけですんだかも知れないのに」


《しっかり者》


ラーニャ「ごめん」


キアルは、微笑みラーニャの眼帯に手を添える。




玄関扉が開き、防護マスクにボロ布を纏った二人組が入ってくる。


?「おう、帰ったぞ」


キアルとラーニャは、二人を出迎えに来る。


キアル「お帰りなさい。ジル。バリアス」


ジル「あぁ、ただいま」


バリアス「あい」


二人は、マスクを外す。


《ジル》《30代後半》《年齢不詳》《生年月日不明》《半妖》


黒髪。おかっぱ。両目は潰れ、顔には火傷の跡がある。


牙が生えている。


《バリアス・ドル》《27歳》《11月18日生まれ》《半妖》


ぼさぼさの黒髪。大柄な体。体の表面は、鱗に覆われている。


水かきのある手。


頭頂部には、ひび割れた皿がある。


バリアスは籠を背負っており、中には大量の絡繰り人形の部品やガラクタが詰まっている。


《ファル・ロマネッタに「態度が気に入らない」という理由で顔を焼かれ、失明》


ジルは、尖った耳と鼻をひくひく動かしている。


ジル「なんじゃ、なんじゃ。また、ラーニャが何かしたのか?」


《年寄りじみた喋り方が特徴》


キアル「当たり」


ラーニャは、ムスッとする。


《スキル一:微かな筋肉の動きや血の流れで、その人の健康状態や感情が分かる》


ジル「ふむふむ。今回は、左手薬指か」


キアル「帰ってきたばかりで、悪いけど。お願いできる?」


ジル「任された」




■半妖専用屋敷・二階・寝室


窓の外では、バリアスが花に水をまきながら小鳥や小動物と戯れている。


《口数が少なく、気が小さい》《暴力が嫌い》


ラーニャは、バリアスの姿を見つめ微笑する。


ジル「さて」


ジルは、ラーニャの首筋に噛みつく。


《ジルという名は、幼い頃に半妖売りの牢屋で一緒だった半妖の女性がつけてくれたもの》


ラーニャ「うっ」


《スキル二:怪我の治りを促進させる物質を体内で生成。相手に噛みつくことで注入する》


ジルは、舌なめずりをする。


ジル「ふぅ、これで大丈夫。3・4日もすれば痛みはなくなるじゃろう」


ラーニャ「ありがとう」


ジル「あまり、人間ハルヴァスに喧嘩を売るな。いつか死んでしまうぞ?」


ラーニャ「わかってる」


《ラーニャを実の妹のように思っている》


キアル「わかってない」


二人は、言い争いを始める。


ジル「こらこら、喧嘩をするな。傷に障るぞ?」


ジルは、やれやれと溜め息を吐く。


ジル「なぁ、ラーニャ。お主の過去はここにいる者たちは承知している。お主の気持ちもわかる。じゃがな、あまり皆に心配をかけさせるな。いいな?」


ラーニャは、視線を床に落としてこくりと頷く。


ジルは微笑み、ラーニャの頭を撫でる。




蝋燭の明かりを頼りに本を読んでいるバリアス。


ベッドで横になって眠っているジル。


ハンガーに吊された二着の給仕服。


寝間着姿のラーニャは、折れた指を見つめている。


キアル「どうしたの。痛くて、眠れない?」


寝間着姿のキアルが、ベッドから起き上がる。


ラーニャ「ううん。ジルのおかげで痛くはない」


キアル「じゃ、どうしたの?」


《ラーニャが可愛くて仕方がない》


ラーニャ「・・・・・・なんでもない」


キアル「気になるじゃない。教えて?」


キアルは、ラーニャを抱きしめる。


ラーニャは、キアルの胸に顔が埋まる。


ラーニャ「もう、子供扱いしないで」


ラーニャは、キアルを突き放す。


キアル「私より年下なんだから。十分、子供」


キアルは、両手を広げてにっこりと微笑む。


《スキル:人の心を和ませ、眠りに誘う》


アーニャは、キアルが放つ和みオーラに抗う。


キアル「おいで」


アーニャは、こくりと頷きキアルに抱きつく。





■ラーニャの夢


ラーニャ(4)は、銀髪に赤い瞳の少女と遊んでいる。


そこへ、銀髪に赤い瞳の女性がやって来る。


少女は女性のもとへ駆けていく。


ラーニャも女性のもとへ行こうとする。が、体が動かない。


少女と女性は、手をつなぎどこかへ歩いていく。


ラーニャの声は二人には聞こえない。




■半妖専用屋敷・二階・寝室


ラーニャは目を覚ます。


呆れ顔のジルとキアルがラーニャの顔を覗き込んでいる。


ジル「やっと目を覚ましたか?」


キアル「まったく、呆れた」


ラーニャ「……っえ、どうしたの?」


ジル「少し前に地響きがあってな」


ラーニャ「地響きって?」


キアル「さぁ、原因は分からない。その所為でガラクタの山が崩れちゃって、入り口が塞がっちゃったの」


ジル「今、バリアスが片付けておる」




■半妖専用屋敷・玄関


ガラクタが崩れ、玄関扉を塞いでいる。


バリアスは、ガラクタを撤去している。


給仕服に着替えたラーニャがやって来る。


ラーニャ「ごめんね。私も手伝う」


ラーニャは、ガラクタを持ち上げようとする。が、重くて動かない。


無理して持ち上げようとして、指に激痛が走る。


バリアス「あい」


バリアスが片手で持ち上げ、廊下の隅に置く。


《力持ち》《心優しい》


バリアスの体の表面は乾燥している。


ラーニャは、台所へ水を汲みに行く。


そして、バリアスに差し出す。


ラーニャ「私には、これぐらいしか出来ないけど。頑張って」


《頭部の皿は乾燥・衝撃に弱い》


バリアス「あい」


バリアスは、水を頭から被る。


《命の次に大事》


乾燥していた皮膚に潤いが戻っていく。


《ファル・ロマネッタに実験と称して皿を割られ、感情を失う》


バリアスは、次々にガラクタを撤去していく。




■半妖専用屋敷・外


空は暗く、ガス灯が辺りを照らしている。


地面には煉瓦が敷かれ、煉瓦造りの家が建ち並んでいる。





ジルは、欠伸をする。


《多少のアクシデントには、強い》


ジル「さて、周りの様子を探るかのう?」


《極度の怖がり》


給仕服に着替えたキアルは、落ち着きがない。


ラーニャ「妙に静かだと思わない?」


キアル「っそ、そうね」


ジル「何じゃ、これは?」


ラーニャ「どうしたの?」


《失明が原因でスキルが強化》《数百メートル先の人の動きや会話。においまで分かる》


ジル「人の悲鳴や怒号が飛び交っておる。それに、銃声も。かすかに血のにおいもするぞ」


《元バルムス帝国出身》《最下層ゲルラット市民》《8年前、帝国とガレリア王国との間で起こった小競り合い》《混乱に乗じてガレリア王国へ》《家族は戦闘に巻き込まれ死亡》


キアル「もしかして、敵国の襲撃とか?」


ジル「港の方か。離れすぎていて何を言っておるかは聞き取れん」


ラーニャ「私、ちょっと見てくる」


ジル「おいおい、近所の酔っ払いの喧嘩を見に行くノリで何を言っておる。危険じゃ」


キアル「そうだよ、危険なことはしちゃダメ」


キアルは、目に涙を浮かべてラーニャの腕を掴む。


ラーニャ「ここで待っていても何もわからない」


キアル「……そうだけど」


ラーニャ「大丈夫、心配しないで。無茶はしない。バリアス、2人をよろしく。守ってね」


バリアス「あい」


キアル「ちょ、ラーニャ」


ラーニャは、ロマネッタ家の屋敷に走って行く。




■ロマネッタ家・屋敷内


ラーニャは、部屋を一つ一つ確認していく。


屋敷内に人の気配はなく、どの部屋も荒らされている。


食器が割れている。


《三代目当主リオ・ファナットの初孫祝いとして送られた》《地震で落下》


ラーニャ「何だ、これ?」


壁や床には、真新しい傷がある。


《製造日:一五七八年前》《初代当主ディレトス・ファナットの邸宅として建造》《慌てたメイドが、鞄をぶつける》


壊れた食器が、カタカタ音を鳴らしている。




■ロマネッタ家・地下


ラーニャは、階段を下っていく。


食料や生活必需品が備蓄されている。


《緊急避難用》《港まで直通》


部屋の奥。鉄製の扉が開いている。


ラーニャ「やっぱり、思った通りだ」




■通路


鉄製の天井や壁。床。


轟音が響いている。


窓から、月明かりが差し込んでいる。


窓の外には、雲海が広がっている。


雲の切れ間からは、荒廃した大地が見える。


ラーニャ「何年ぶりだろう。この景色を見るのは」


銃声。


窓の外を魅入っていたラーニャは我に返る。




■港


小型船が、何十隻も格納されている。


格納庫の入り口付近では、市民たちが集まり貴族に抗議している。


執事やメイドたちは、銃で市民たちを威嚇している。


ダリス「下がりなさい、下民共」


ダリスは、発砲の指示を下す。


執事やメイドたちは、市民たちに発砲。


市民たちは次々と倒れていく。


怒号と悲鳴が飛び交う。


その間に、寝間着姿のモーラ・ファル・エドガー・ダリス。荷物を持ったメイドや執事が小型船に乗り込んでいく。その中には、オルバやルナの姿がある。


船のハッチが開き、小型船は飛んでいく。




■港


執事やメイド。市民たちは、墜落する船から次々と脱出していく。


脱出する順番を巡って、小競り合いが起きている。


スキンヘッドにお面を被ったハル・グラヴァード。


白髪に白鬚。ボロ布を纏ったシャルベ・モルーボ。


二人がその様子を遠くから眺めている。


ハル「人間とは、愚かな生き物ですね。シャルじぃ」


シャルベ「そうじゃな」


ハル「おや、近くで声が聞こえますね」


ハルは、辺りを見渡す。




■路地裏


ラーニャが、座り込んでガタガタ震えている。


ハル「こんな所で何をしているのですか。お嬢さん」


シャルベ「その格好、どこぞの貴族に仕えているメイドか?」


ラーニャは、反論しようとするが恐怖で声が出ない。


ハル「恐がらなくて良い。僕たちは、人間じゃない。君と同じ半妖さ」


ラーニャは、驚いた表情で二人の顔を見つめる。


《ハル・グラヴァード》《27歳》《2月19日生まれ》《半妖》《人の心が読める》


ハル「やぁ、お嬢さん、こんばんは」


《シャルベ・モルーボ》《69歳》《11月2日生まれ》《半妖》


シャルベ「お前さん、その髪と目の色はっ!?」


ハル「なんだ、シャルじぃ。知り合いか?」


シャルベは、じっとラーニャの顔を見つめる。顎鬚を撫で考え込む。


《最近の悩みは、物忘れが酷い事》


シャルベ「サクナ姫か。いや、姫よりも若い。だったら、誰だ」


ラーニャは、不思議そうにシャルベを見つめる。


ハル「お気になさらずにお嬢さん。シャルじぃは考え込むといつもこうだから」


ラーニャは、ハルの顔を見て驚き硬直する。


《顔には、耳や目や鼻や口がない》《趣味は、お面作り》


ハル「おいおい、そんなに見つめないでくれ。照れるじゃないか」


《挨拶代わりに人を驚かす》《両手の平に目がある》


ハルは、両手で顔を隠す。そして、ラーニャに手の平を見せつける。


ハルの両手の平には、目がある。目は、ぎょろぎょろと動いている。


ラーニャは無反応。


《人が困っている姿が大好物》


ハル「おや、これで驚かないのは君が初めてだ。つまらない」


ラーニャは、はっと我に返る。


ラーニャ「私は、人や物の情報が見えるので。あなたと同じです」


ハル「なるほどね。なかなか、レアなスキルをお持ちで」


シャルベは、はっと何かを思い出してラーニャの顔を見つめる。


シャルベ「もしや、お主。ファナット家の娘か?」


《ラーニャの母(ルーベ・ファナット)》《旧姓:ルーベ・エヴァニス》《エヴァニス家に仕えていた元執事》


ラーニャ「っは、はい。私の名前は、ラーニャ。ラーニャ・ファナットです」


ラーニャの表情が、ぱぁと明るくなっていく。


シャルベ「おぉ、そうか。そうか。やっと思い出したわい。確か、妹の方だったな。大きくなったのう。父も母も姉も元気か?」


ラーニャの表情が曇っていく。


シャルベ「どうした?」


ハルは、ラーニャを見つめる。


ラーニャ「両親は」


ハルは、咳払いをする。


ハル「世間話をしている時ですか、シャルじぃ?」


ラーニャは、きょとんとした表情でハルの顔を見つめる。


《人の心が読めてしまうために、余計な気を遣ってしまうのが悩み》


ハルは、ふんっと鼻を鳴らす。


《同じようなスキルの者と出会えて、ちょっと嬉しい》


シャルベ「その通りじゃったな」


ハル「っで、お嬢さんはどうして此処へ?」




■切り取られた大地バシュテリア・マウロ城・王の間


麻の服を着たクルト・シュタベルと執事服を着たルヴェロ・デュノマスがゲームをしている。


上半身は人、下半身は百足のルヴェロ。


白髪のオールバックに口髭を生やしている。


金髪で整った顔立ちのクルト。顔色が悪く、咳き込んでいる。


警報が鳴り響く。


クルト「どうかしたかい?」




カシム・オジュラスは、幾つものモニターを前にキーボードを操作している。


カシムの顔には、6つの目があり、それぞれ独自に動いている。


王の間にある巨大モニターに一隻の船の輪切りにされた図が映し出される。


カシム「超大型居住船四番『ディレル・ノヴァ地区』で異常発生。高度が下がってる。クルト君」




ルヴェロ「国王様と呼べといつも言っているだろう?」


クルト「いいよ、ルヴェロ。僕は気にしていないから」


ルヴェロ「私が困るのです。ただでさえ国王様は」


クルトは、ぶつぶつと独り言を呟いているルヴェロを見て笑う。


カシム「っで、クルト君。緊急通知発令しちゃう?」


クルト「そうだね。何かの誤作動かも知れない。もう少し、様子を見よう。でも、救助班を待機させておいてくれないか?」


カシム「おっけー」


クルトは、玉座から立ち上がり巨大モニターを見つめる。


(第1話 終了)

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隻眼の姫君とポンコツ王子 @meganecoking

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