第3話 倉敷のスイーツ巡り

今年のバス旅行の行き先は、岡山の倉敷。これまで訪れたことのない場所だったので、出発前から少しだけワクワクしていた。今回は、美しい街並みが広がる美観地区で、スイーツの食べ歩きを楽しむというテーマだった。甘いものは好きだが、スイーツを巡って食べ歩くという経験は初めてのこと。ちょっとした冒険気分で、倉敷への旅が始まった。


バスを降り、美観地区の入口に足を踏み入れると、白壁の町家やなまこ壁が続く情緒ある風景が広がっていた。歴史の香りが漂う街並みは、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わわせてくれる。そんな素敵な景色の中で、スイーツを堪能できるなんて、贅沢な一日になりそうだと心が躍った。


まず訪れたのは、少し有名なパフェのお店。カウンターには色とりどりのフルーツやクリームが並び、どれも美味しそうに輝いている。メニューを見て悩んだ末、季節のフルーツを使ったパフェを選んだ。見た目も鮮やかで、思わず写真を撮りたくなるような一品。スプーンですくって口に運ぶと、瑞々しい果実の甘みが広がり、冷たいアイスクリームと混ざり合って絶妙なハーモニーを奏でていた。甘すぎず、さっぱりとした味わいが心地よく、口の中が幸せで満たされていく。普段はあまり食べないパフェに、こんなにも感動するとは思っていなかった。


次に立ち寄ったのは、和風スイーツのお店。お団子やわらび餅など、和の甘味が揃っていて、どれも美味しそうだった。せっかくなので、わらび餅をいただくことに。プルプルとした食感のわらび餅を、きな粉と黒蜜でいただくと、ほのかな甘さと香ばしい風味が口いっぱいに広がった。その柔らかな口当たりと絶妙な甘さに、思わず頬が緩む。


食べ歩きを楽しみながら、美観地区を散策する。川沿いの道を歩き、柳の木が風に揺れるのを眺めながら、静かな時間が流れる。石畳の小道を進むと、古い蔵や町家が立ち並び、その一つ一つが美しい風情を醸し出している。どこを見ても絵になる景色で、気持ちが穏やかになるのを感じた。忙しい日常の中で忘れがちな、ゆったりとした時間をここで過ごしていることが、なんだかとても贅沢なことに思えた。


最後に訪れたのは、倉敷名物の吉備団子のお店。岡山といえば吉備団子、せっかくなので家族へのお土産にしようと思い、いくつか買うことにした。店員さんが試食を勧めてくれたので、一口食べてみると、柔らかくて程よい甘さが口の中に広がる。もっちりとした食感と優しい甘さが、なんとも懐かしい気持ちにさせてくれた。


スイーツを食べ歩き、心もお腹も満たされながら、美観地区をゆっくりと巡った一日。普段のバス旅行では、観光名所を巡ることが多かったけれど、今回は街の雰囲気を味わいながら、甘いものを堪能するという、また違った楽しみ方ができた。新しいことに挑戦してみると、こんな風に意外な発見があるんだなと思った。


夕方、バスに戻り、少し疲れた足を休めながら吉備団子を見つめる。このお土産を持って帰ったら、家族は喜んでくれるだろうか。そんなことを考えながら、今日の思い出を心に刻む。歴史ある街並みの中で、美味しいスイーツを味わい、心が和む時間を過ごせたことに感謝しつつ、来年のバス旅行も新しい発見と楽しみがあることを期待しながら、帰路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全てが新鮮?作業所バス旅行 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ