第2話:羽部、ダンジョンに立つ!
「まんまダンジョンやんけ。」
ある程度ダンジョンの中を進んで一番思ったのはこれだ。
「みんなそれ言うね、私そうゆうジャンルの本とかアニメ見らんけどそんな似とるかね。」
いやだって、このゴツゴツした岩肌に囲まれたこの空間はザ・ダンジョンやん、地面に生えとるこの草とか多分薬草やん。
「気分上がるのは勝手やけど、そんなに奥行くと‥」
その草をかがんでよく観察する、見れば見るほどに薬草だ、これを干して湯船に浮かせるだけで腰痛が和らぎそう。
なんてアホな事を考えていると‥
「グギギ!」
「おわ!何コイツ!?」
物陰に緑色の肌をした小人、俗に言うゴブリンが手に持っているこん棒を振り上げていた。
「危ない!」
刹那、先輩の剣がゴブリンの胸を貫いた。
「ギ!?」
ゴブリンはそのまま消滅し、そこには持っていたこん棒と光る石が落ちていた。
「ということで今のがゴブリンでそこにあるのが魔石、一般的なドロップアイテム。」
「やだ、先輩頼りになるカッコいい、キュン。」
「まぁまぁ、そう褒めるな、何せ才能の原石やからね。
なんと!私は同期と比べてステータスの上がり方がとても早い‥って定期診断の担当の人が言っとったんよ。
それに!もう少しでレベルアップするからね、さらに強くて頼りになる先輩になっちゃうよ~。」
「ゴギャ!」
「次、自分が戦います。」
「おっ?戦う?いいよ~、頑張ってね。」
人生初の戦闘ですよ、講義で習ったのは相手の動きをよく観察する事が大事だとか、‥知らんわ!
「ギャ!」
うん、2倍近く体躯に差があるんだ、力一杯殴られたら耐えられないよね。
「羽部君!初の獲物おめでとう!よくやったね!」
いきなり先輩に抱きつかれてもみくちゃにされる、えい!ってやっただけだよ?そんな喜ぶ要素ある?
「さて、今さらだけどどのくらいまで進むか確認しとこうか。」
「時間が許す限りで進む感じでいいんじゃないですかね?」
「そうしよっか、そいじゃとりあえず帰りも含めて最長十時まででいいかな。」
「わかりやした。」
その後、時折現れるゴブリンをえい!ってしながらダンジョンを進んでいると、そういえば見ていなかったお決まりのあれを見つけた。
「これは‥木の箱?ですかね、もしかして宝箱とか!?」
「おっ、そうやね、でも木の箱はランク一番低いから大した物はでらんのよね。」
「開けていいやつですこれ?」
「このダンジョンはそんなに危険度高くないし罠は無いやろ、大丈夫。」
それでは人生初の宝箱の中身はいったい?
テテテテ~
「ポーション‥だよな。」
宝箱の中には緑色の液体が入った瓶がありました。
「ポーションだね。」
なんかショックだけど一番ランク低いやつやからね、こんなもんやろ。
それからしばらくまた同じように進んでおりました、戦闘にも慣れたもので2レベ程上がったんじゃない?知らんけど。
ついでに道中、先輩からダンジョンについて色々聞いたけど、どうやらこのダンジョンについて、成り立ちのほとんどが謎で、異世界の一部と繋がっているなんてオカルトじみた話が界隈の定説らしい。
でもよく考えたらそのぐらいではないとダンジョンなんて謎空間は説明できないよね。
あとダンジョンは定期的に中身が変わり、まったく別の空間になるらしいがそれが繋がっている座標が変わったとか言われて、それが異世界説をさらに後押ししてるんだとか。
そんなことはさておき、着きましたよボス部屋の前、でかい金属の扉が立ち塞がっております。
「着いたよ~、ここが言わなくてもわかると思うけどボス部屋の前、時間にまだまだ余裕あるから挑戦って事でおk?」
「ぞす!」
「じゃ、開けるよ~」
ギギギ…
なんか柄にもなく緊張してきた。
重厚感のある扉がゆっくりと開かれ、その先には。
「ギギゲアァ!!」
全身に重そうな鎧を着込んだ、隙間から見えるのは鱗、鱗、鱗、二足歩行で、ゲームだとリザードマンって名前がついてそうな魔物がこちらを睨んでいた。
「一応聞いときますけど、えい!じゃ終わらないですよね?」
「鎧着てるから当然やね。」
「勝てます?」
「私強いからね。」
緊張してたのが馬鹿みてぇだ、やっぱ慣れない事はするものではないですな。
ダンジョン潜ってたら異世界に飛ばされると思わないじゃん! 生牡蠣 @namakaki
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