第361話 食事会

 おはよう。ロウです。ようやく目標達成だ。



 最近は、念話の習得を目指して頑張っていたんだ。自分達が確保しているダンジョンのボス部屋で、工夫をして訓練していた。


 グラニの訓練指導と同時に、リンの応援やアドバイスをしていた。最大人数で念話をしておきたかったんだけど、その話を食事の時にしたらリンが立候補した。お父さんと話したいんだ。


 そこで、グラニの指導と混線すると困るので、三人での会話状態ではなく、あえて二人は別々のグループに分け、それぞれの念話を維持するのも良かったみたい。俺の声が、片方にしか聞こえないように調整するのも大変だったんだ。


 リンが離れた場所で、魔法の練習をしていたのも良かったのかな? あえて石壁を作ってみて、視界が通らない相手に念話を接続する練習もしてみたんだ。気配を察知しない状態でも試したよ。


 どれが良かったのか分からないけれど、フェリナにも試してもらおう。


『それじゃあ、次はフェリナの番だ。念話が習得できるまでは、基本的に預けておくから毎日使って頑張って。まあ、フルールとは話すだろうから、さっき説明したみたいに、フルール用と別の人との会話用に分けておくのが良い練習になるよ』


『はい。やってみます』

『フェリナ母さまと、いっぱいお話します』


『うん。頑張ってね』


 フェリナに心伝縁環しんでんえんかんの首飾りを渡したので、効果は低いけど聴覚の首飾りを装備しておこうかな。念話は覚えたけど、ムルルが持つ精霊聴スキルも身に付けたいからね。



 それで今日やることなんだけど、お昼に貴族部屋でのお食事会だ。ムルルのドレスが完成したんだ。生地きじを染める所から、こだわって作ったみたい。良い感じの赤みがかった黒の布が出来たらしい。


 この後は、ムルルと一緒に髪型を調整して、ドレスに着替えるんだ。



 その間に俺は、料理の最終チェックだ。俺達用の料理とゴーレム君用の魔力料理、そして妖精用の魔導料理だ。


 ただ残念な事に、全てを魔導料理にするには時間が足りなかったよ。妖精の二人には、魔導料理が存在するもの以外は、俺達用の料理のミニサイズとゴーレム君用の魔力料理を両方出す予定だ。


 最後に貴族部屋の絵や彫刻などを確認して、そろそろ自分も着替える時間だ。


 ゴーレム君にも、服を着てもらう。革鎧のようなものを着た後に、貴族用の服を着るんだ。魔導兵器の鎧と貴族用の服の間に革があることで、破れにくくなっている。


『よし、これで完璧。ゴーレム君、似合っているよ。鏡で確認してみて』

『わあ、服着てる。なんか不思議』


 鏡で全身をチェックしているゴーレム君。普段とは違う事をすると新鮮だよね。フェリナのドレスから始まった食事会は、気分転換にもなるし、新しい刺激があるし、非日常を体験できるのは良いよね。



 二人で屋敷の一階で待つ。すると、すぐにフェリナ達が来る。真っ先に飛んでくるのはリンだ。


『おとーさーん』


 飛んで来たのは、衣装チェンジしたリンだ。優しく受け止めて、手のひらに乗せると、リンが立ってクルリと回り、よく見せてくれる。


 妖精の服は生まれた時からまとっているけど、よどんだ魔力とは別方向に変質した魔力で、名付けるなら妖精魔力とでも言うべきもので出来ている。イメージ次第では、服装を自分で変えられるんだ。


 服のデザインにも詳しいフェリナ監修により、ドレスを着た貴族のお嬢さんになったリン。可愛らしいね。


『可愛いお嬢さんですよ。リン』

『えへへ。可愛いの選んだんだ。フェリナに可愛いのがいいってお願いしたら、いろいろな服を見せながら説明してくれて、ムルルがそれを絵に描いてくれたんだよ』


『良かったね。お気に入りの服を、これからも増やして行こうね』

『うん! お着換え楽しい』


 そこへ、フェリナ達も到着する。


「お待たせしました。全員の準備ができました」


 そういうフェリナは、複数の青を使ったドレスだ。濃い青から薄い青まで、複数の糸や布を使ったもので、肩やスカートが少しふっくらとしていて、立体的なデザインになっている。


 普段は肩に乗っているフルールは、ドレスを崩さないように横に浮いている。そのフルールも衣装を変えたようで、フェリナとお揃いの青いドレスだ。


 ムルルの方は、赤みのある黒いドレスで、スカート部分が足首辺りまで隠れる長いタイプだ。大人っぽいデザインだね。赤い腰のリボンがえるよ。


「ゴーレム君、かっこいいよ」

『ムルルは、綺麗だと思う。大人な感じがする』


 参加者は、ここにいる六名だ。一気に参加者が三倍に増えたね。グラニだけは、いつも通りロコ達と昼食だ。服がないのもあるけど、そもそも辞退したんだ。貴族的な食事会は、緊張して無理だそうだ。


 高級料理屋にも連れていきたいし、貴族を治療することもあるかもだから、慣れて出来るようになって欲しいけどね。まあ、その内、頑張ってもらおう。



 全員を貴族の廊下に飛ばしたら、貴族部屋に移動する。


 全員が着席したら、遠隔で料理を並べていく。



 まずは、サラダ。新鮮な野菜はもちろん、フィタサボテンを使っている。そこに木の実も散らして食感も楽しくした。そして、香草酢を使ったドレッシングに、カラの凝縮タマゴの黄身だけを使った濃厚で香りの良いマヨネーズソースを用意してある。


 ゴーレム君用の魔力料理は、樹命属性をメインに、水属性魔力に溶岩属性をバランスよく混ぜた物を、ドレッシングのように纏わせている。


 魔石の器もサラダ用に、一度溶かして半球の形にして、ふちをギザギザにした後に角は丸くしてあるんだ。器にも、こだわっているよ。



 次にスープ。今回は、キノコがメインだ。海藻の出汁と合わせていて、複数のキノコは食感に違いがあっていい。ブルシャークのフカヒレや、カラの凝縮肉厚タマゴを具材に入れている。味も良いけれど、食感も楽しめるスープだ。


 魔力料理の方は、土属性と樹命属性を混ぜたり、水属性と樹命属性を混ぜたり、風属性と水属性を混ぜたりしたものを、水属性魔力の中に丸めて配置している。器はシンプルな半球の形だね。


 ちなみに、サラダとスープは、籠入りのパンと一緒に最初から出されているスタイルだ。



 そして、最初の料理は魚料理からだ。今回の魚料理では、海で出会った十メートルのサーモンの肉厚のあぶりをメインに、タコやイカ、小魚、貝を刻んでタマゴと混ぜ丸い型に詰めて焼いた魚介の型焼きを横に添えている。


 魔力の方は、水属性に溶岩属性と樹命属性を混ぜたものや、水属性に火属性と闇属性を混ぜたもののように、水属性をメインに三属性を混ぜた魔力を使っている。器は台形の形で、下が狭く上が広がっているタイプのものだ。



「それじゃあ、貴族になったつもりで食べていこう。いただきます」

「いただきます」


 巨大サーモンのあぶりは、塩で食べる。この塩は、結晶魔法で作った塩なんだ。塩の結晶を核に、海水を捧げて作った巨大な塩の結晶を、風魔法で粉砕した物。同じ北の海で取れた物を合わせてみた。


「美味しい! あっ。とても美味しいですわ。ゴーレム君はどうですか?」

『僕のも美味しいです。いろいろと混ざっていて、複雑な味』


 ムルルが思わず普段通りになっていたけれど、すぐにお嬢様に戻っていた。無理することはないけれど、ついでに演技スキルが手に入るなら嬉しいかなという気持ちもあるんだ。一番は、非日常を楽しむためだけどね。


「あの大きい魚ですよね。ここまで美味しいとは思っていませんでした。あの一度だけしか見かけませんでしたけど、珍しい魚だったんでしょうか?」

「そうかもしれない。まあ、珍しい魚なら、それはそれで、食事会には適した食材かもしれないね」



 魚の次は、肉料理だ。ハードヘッドのステーキのフォアグラのせがメイン、高級なチーズをカットして添えている。ソースには、お酒を使っているが、アルコールは飛んでいると思う。


 魔力料理の方は、溶岩属性をメインに三属性を混ぜたものを層にして使っている。添え物には、新属性の結晶属性と樹命属性を混ぜた物がある。結晶属性が混ざること

で、濃厚さを演出しているんだ。器は円柱にしてみた。


「香りがいいですね。もしかして、あの貴重なお酒ですか?」

「そうだね。いつまでも持つ物でもないし、飲める状態の内に使ってしまおうと思ってね。個人的な好みではあるけど、飲むよりは、こうしてソースにした方が美味しいと思うんだ」


『お父さん。お父様? このチーズ、美味しいですわ!』

『ふふっ、気に入ってくれたんですね。お嬢様のお口に合って嬉しいです。希少で高級なアーマーディアのチーズなんですよ』


『アーマーディアのチーズ、美味しいですわ』


 元気なリンお嬢様も、アーマーディアのチーズが好きみたいだ。この笑顔を見ると、まだまだあるんだけど、追加で仕入れたくなるな。



 デザートは、蜜芋を使った濃厚なクリームと、しっとりとした甘さ控えめの生地で層になっているケーキだ。それと、モンブラン風の蜜芋ケーキも作った。そこに、ハチミツ掛けのアイスを添えてある。


 魔力料理のデザートは、風魔力の砂嵐魔力包みがメインで、新属性の結晶属性と陽光属性を混ぜたものに、少量の風属性でふんわり感を加えたものを丸めてある。器は球体の下の部分をカットして転がらないようにしたものだ。


 いろいろと自分でも試食したけれど、陽光属性と風属性の組み合わせは、デザートっぽさがあるかな。


「蜜芋の第一弾が出来たので、デザートにしてみたんだ。どうかな?」

「お芋の甘さなんですね。美味しいです。今度、お芋だけでも味見してみたいですね。お願いできますか?」


「あぁ、用意しておくよ」



 今回も成功と言っていいだろう。普段は出さない希少な食材や、手間がかかる料理を楽しむ会だ。細かい話をすれば、普通の料理より魔力料理、魔力料理よりも魔導料理の方が手間がかかっているけどね。


 明日は、そろそろ移動の準備をしようか。グラニの身分証のこともあるし、冒険者ギルドに行かないとな。


 街を離れる前にランクアップのために、砂のダンジョンの最奥のボス依頼があれば受けておきたい。依頼がないなら、ボスを丸ごと冒険者ギルドの解体場に持ち込んで、アピールはしておきたいな。


 そういえば、貴族依頼にハリペイム草の納品依頼があったよな。幻痛病なら助けたい気持ちもあるけれど、直接かかわるのはリスクかな。


 そうだ! 商人ギルドに、幻痛治療薬を売ってみるのがいいんじゃないか。上手くいけば貴族の手に渡るだろう。貴族側から症状を伝えて、治す薬がないかを商人ギルドに問い合わせていそうだもんな。



 まずは、みんなで会議だな。少なくともフェリナには相談しておきたい。冒険者のチームメンバーも増える予定だし、副リーダーになってもらおうかな。

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