第112話
「やめろっ!」
秀也は勢いよく、本を閉じた。
じろっ…と、隆一を睨む。
「…っ」
「男前が台無しですよ」
ニッと隆一は笑う。その顔はまるで、いたずらっ子のようだった。
「…加納…うるさい。静かにしろっ! ここは図書室だぞっ!! 特に用がないなら、帰れっ! 俺は本が読みたい」
「用があるから、先輩を探していたんですよ? 勉強で分からないとこがあって…教えて下さいっ!」
「……」
秀也は、じっと隆一を見た。
隆一は、ニコニコ笑っている。
ふぅー。
軽く息を吐き、隆一に訊ねた。
「…どこだ?」
隆一は持っていた鞄から、教科書を取り出した。
何かと隆一は秀也にくっついていた。
今でこそ、何気ないやり取りをしているが隆一は秀也と友人として付き合うことはないと思っていた。
秀也は、隆一より1つ年上だったが、学校内で1、2を争う秀才であった。名と顔は皆に知れ渡っていた。
仏頂面で、愛想がなく…どこか近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。誰も近づくな…近づけさせたくない空気を纏っていたので、校内で秀也が誰かと話している姿を見かけたことはなかった。
隆一は頭はきれるが…おっとりでそそっかしい性格だった。愛想があり。いつも誰かしら周りに人がいた。
正反対の2人。
秀也は先輩だったため、関わることはないと思っていた。
もし、関わることがあったとしても…ひどく他人行儀な振る舞いで終わってしまうだろう…。
お互いに関わり合おうとも思わないし、お互いに分かり合えるとも思っていなかった…。
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