第八章 優
婚礼の日
第104話
「とても…綺麗です」
白色の洋装姿で隼一が姿を現した。
「あっ…ありがとうございます」
派手な装飾はないシンプルな白色のドレスを見に纏ったさゆりは微笑みを浮かべた。
「行きましょう」
差し出された手に掌をのせた。
さゆりの指先は少し震えていた…。
加納家と九条家の婚礼は、教会で行われた。
それは、さゆりの父親の強い要望であったー…。
婚礼前夜。
さゆりは、応接間に呼ばれていた。
ソファーに両親と向かい合う形で座った。
「教会で式を挙げさせてもらえることに決まった」
「えっ…どうして…?」
さゆりは目を見開き、驚く。
「小さい頃から通い続けている場所だ。しかも、教会は婚礼を挙げる場所だと聞いた。これ以上、相応しい場所が他にあるか?」
父親は一方的に言い放った。
「まぁ、素敵ですね」
母親は、うっとりしながら喜んだ。
「……」
さゆりは言葉を失う…。
…今さら…。
教会に行くことを良く思っていなかったのに…?
「さゆりにとって…とても思い入れの深い場所だからてと、伝えると快く加納家も神父も了承してくれた」
父親は一刻も早く、さゆりの心から孝直のことを忘れさせようと、婚礼の場所を教会に選んだ。
2人が出会い、想いを重ねた場所…。
今度は、さゆりと隼一…2人の思い出の場所にしようと考えていた。
「…さゆり…?」
母親は怪訝そうにさゆりを見た。
「…あっ…はい。分かりました」
「用件はそれだけだ」
さゆりは背筋を正す。
「お父様、お母様…今まで大切に育てて頂き、ありがとうございます。明日、加納家に嫁ぎます」
母親は瞳に涙を浮かべ、そっと拭った。
父親は瞳を細め、口許が少し緩んだように…さゆりには見えた。
婚礼は滞りなく進んだ。
加納家は東京に住まいがあるため、さゆりは東京へと旅立ったー…。
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