第103話

それは…孝直の家に一緒に来てほしい…と、いうことだった。


倒れて1週間、ゆっくりと自宅療養していたとはいえ…病み上がりの孝直に無理をさせてしまったのではないか…?

もし、それで体調を崩し、自宅で倒れていても…身体が小さい分、1人では孝直を病院に運んでやれない…。もしも、何かあり…手遅れになったら…と、言い、頼みこんだ。


雄助は「嫌だ」と、即答した。


今だに、昨晩の怒りがおさまっていなかったからだ。

新も簡単には引き下がらず…「頼む」、「嫌だ」を繰り返していた。


結局…二人の押し問答を家の中から聞いていた雄助の妻が一言。


「いい年こいた大人が何やってんだいっ!? 子どもらが見てるよっ、みっともない…。とっとと、行ってきなっ!」


少々、強引に雄助にお弁当を渡すと…二人を玄関から追い出した…。


ーと、いう経緯で…。

雄助は渋々、孝直の家に足を運ぶこととなったのだった…。


新は、さも当然という顔で言った。


「当たり前だろっ!? お前ら2人の仲が悪いまま、いい仕事が出来るかっ!」

「……」


新のごもっともな意見に何も言い返せなかった…。


「早く行かねぇーと、おやっさんにどやされるぞっ!」


新と雄助は歩き出す。

2人の背中に向かって、孝直は叫んだ。


「心配かけて…ごめんなさいっ! ありがとうございますっ!!」


2人は振り向き様、屈託ない笑顔で笑った。

雄助が手招きする。


「早くこいっ! 孝直!!」

「はいっ!」


先を歩く2人を孝直は追いかけたー…。

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