第50話

「…ただ…」


「なんだよっ!」


「ちよっと、気になってんだよな…」


歯切れ悪そうに雄助は言う。


「…あの、お嬢さん、どっかで…」


「どっかで? 何?」


「見たことがあるよーな…」


「えっ…まさかの、お前の知り合いとか!?」


「違う、違う。そんなんじゃねぇーよ」


雄助はうーんと唸りながら、記憶を巡った。

しばらくして、ポンッと手を叩く。


「あっ! 思い出したっ!!」


新と孝直は、肩をビクッとさせる。


「何をっ!?」


「九条家の娘だっ!」


「はぁー!?」


「えっ…」


…九条…家…。


新と孝直は、びっくりする。


「本当かっ!?」


「あぁ…」


九条家が有名な家族であることだけは、孝直も知っていた。


まさか…さゆりがその家の娘であるとは、思ってもいなかった…。

上品な仕草や身なりが良いので、裕福な家庭のお嬢様かな…と、思ってはいたが…。


「お前、知ってたか…?」


雄助の問いかけに、孝直は素直に首を横に振る。


「まじかっ…」


新が頭を抱える。


「俺は一度だけ、偶然見たことがあったんだ…。随分前のことだけどな…。親方に2人で出来る仕事を頼まれて、俺ともう1人で九条家の屋敷近くで仕事をした帰りに…チラッと。…多分、間違いない…」


「…っ…」

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