第45話
「あっ…渡し忘れないうちに」
孝直は、ハタッと思い出した。胸ポケットに大切に入れていた小さな包みを取り出す。
「これ…」
包みを開き、さゆりに差し出す。
「…しおり…?」
さゆりが小さい頃、姉ーゆかりと一緒に作ったしおりによく似ている。
「あの…俺にくれたしおり…とても大切なものだったんだろう…? 同じものを…と、思って、あっちこっち探し回ったんだけど…同じ色の紙がなくて…。紫苑の花を押し花にして、似たような色の紙で作ったんだ。リボンは同じ色があったんだけど…さゆりは薄桃色が合うなと思ったから」
孝直は少し照れくさそうに言った。
「…はい」
「…っ…」
「…気に知らなかった…かな…」
なかなかしおりを受け取らないさゆりに孝直は不安になる。
「…気に入らないならっ…それでも、いいんだ。受け取らなくて…」
「…ううん」
さゆりは大きく左右に首を振る。
「…しい…」
「……?」
「…すごく、嬉しいっ…」
うっすら瞳に涙を浮かべながら、さゆりはしおりを受け取る。
「ありがとう」
ニコッと微笑む。
孝直は自分の鼓動がドキドキと高鳴り、頬が赤くなってゆくのを感じた。
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