第41話

孝直は、長椅子に座ってぼんやりと十字架を眺めていた。


あれから、3週間が経っていた。


その間、孝直とさゆりは1度も会っていない…。


そもそも孝直とさゆりは教会で会う日や時間をきちんと約束しているわけではなかった。


さゆりは、家庭教師が付きっきりで勉強や習い事の合間にこっそりと抜け出していた。


孝直も仕事や家業のうぎょうの合間に、限られた時間の中で足を運んでいた。


お互い、詳しい事は伝えていないが…お互いに事情があることを承知の上で会えたら…という思いでいた。お互いに時間の取れるゆるせる範囲で、相手を待っているので、待ちぼうけをくらい、会えないことも多い。


「…っ…」


孝直はゆっくりと長椅子から立ち上がり、扉へと向かう。

少し重さのある扉を開けようと、手を伸ばした…。

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