第40話
しばらくして…さゆりは自室のドアをそっと開いた。
廊下をキョロキョロと見回す。
…誰もいない…。
そっと部屋を抜け出そうと1歩踏み出す。
「さゆり様っ!」
自分の名前を呼ばれ、ピクッとなる。
「いけませんよ」
侍女がドアの陰から姿を現す。
さゆりの自室のドアは廊下に向かって開くようになっており、人1人がいても分からない死角になっていた。
「…お願いっ…」
「駄目です」
きっぱりと…とりつく島もない…。
「お願いっ!」
「駄目です。以前でしたら、旦那様はさゆり様が教会やゆかり様の元へ通うことを良く思っていらっしゃらなかったのですが…それを承知の上で、大目に見られていたのです。しかし、年頃になられた今…さゆり様に対する旦那様の思いはさらに強くなられました。九条家の人間としてふさわしい方の元へ嫁ぎ、子孫を残してほしいと…。そのため旦那様の言いつけが厳しくなり、私どもは従うしかないのです。諦めて下さい…」
とても辛い表情を浮かべながら、侍女が言った。
…九条家のため…。
「…っ…」
さゆりは、唇を噛みしめた。
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