第35話

「へぇー、そうだったんだ」


「そうなの。このステンドグラスが好きで、小さい頃から通い続けているの。孝直さんは?」


「俺も小さい頃から…。本を読むのが好きなんだ」


「お互い、小さい頃から通ってるのに、今まで1度しか会ったことがなかったなんて…不思議ね」


「本当だ」


2人は、笑いあう。


「ここにある本は全て読んだの?」


「うん」


苦笑いを浮かべ、孝直は言う。


「まともに小学校に行けなかったから、文字や漢字を知らなくて…最初は読むのにすごく時間がかかったんだ。分からない文字や漢字は神父さんに教えてもらって…それから、だんだん文字や漢字が分かるようになって…読むのが楽しくなった」


「そう」


愛おしそうに本を見つめる孝直。

その横顔を見つめ、きゅんっと胸が締めつけられるような…切ない想いをさゆりは抱いた。


「時々、うたた寝しながら」


孝直はあどけないに笑顔を浮かべ、笑った。さゆりもつられて笑った。


「日差しが気持ち良くて気づいたら、つい…寝てることがあるんだよな~」


うーん…っと、孝直は背伸びをする。


さゆりは少し眩しそうにステンドグラスを見つめていたら…欠伸が出てしまった。

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