第33話

この日をきっかけにさゆりと孝直は、教会でたまに会うようになった。


会えば、2人で長椅子に座り、他愛のない話をする。

それもほんの少し…限られた時間で…。


小さい頃に偶然、1度出会ったきり、今までで会わなかったのは、お互いの事情によるものだった。


さゆりは華族で九条家の1人娘として、大切に育てられ、いつも誰かしら傍に付き添っていた。それは父親が使用人達に言いつけていたことであった。


さゆりには、口うるさく九条家の者としてふさわしい立ち振舞いを常に心がけろと言い聞かせていた。


父親の怒りを買わないよう…雇われてる人達に迷惑をかけないように考え、行動してきた。

なので、教会に行く日も時間もバラバラで、行けたとしてもすぐに帰るということが多かった。


気を使っていたが、父親にはバレバレだった。

大きくなったということもあり、少し口うるさくなくなったが、父親がさゆりの行動を良く思っていないことは確かだった。

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