第31話

「本当にありがとう」


笑顔を浮かべ、孝直はスーッと、さゆりの目の前にしおりを差し出した。


「……」


さゆりは、なかなかしおりを受け取ろうとしない…。

不思議そうにさゆりを見やる孝直。


「あっ…」


気まずそうな表情を浮かべる。


「…しおりの持ち主だとしても…こんなボロボロのしおりを返されても迷惑だよな…。しかも、手作りのしおりがこんな状態じゃ…嫌な気持ちになって当然だ。受け取りたくないよな…。気がつかなくて、ごめん…」


孝直は視線を床に落とす。


「…あっ」


新しいしおりを贈るよ。どんなのがいい?と言葉を紡ぐ前にさゆりの言葉が重なる。


「そっ…そうじゃないのっ!」


「えっ…」


孝直は、視線をさゆりに向けた。


「…っ…」


息を飲む。


ポロッ…ポロッ。


さゆりの瞳から涙が溢れ、頬を伝って流れていた。


孝直は、自分のせいでさゆりを傷つけてしまったと思い、どうしたらいいのか分からずにいた。


「…えっ…あっ…」


言葉がしどろもどろにしか出てこない…。

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