第21話
床を見つめ続けるさゆりに、ゆかりは優しく語りかけた。
「そうね…。でも、会わないかもしれない。その可能性だってあるわ」
「……」
「あくまでも可能性の話。保証はないのだけれど…それでいいの…?」
「……」
「通い続けているのに…本当にいいの…?」
ゆかりは残念そうな表情を浮かべながら言った。
「…私ね…」
「……」
「さゆりが、私の身体が良くなるように祈ってくれてることが嬉しかった。家族の一員として思ってくれてることがすごく嬉しかったの…」
「…お姉様…」
ゆかりは不自由な左足にそっと触れた。
バッチリとした瞳にスッーと通った鼻筋、薄紅色をひいた唇。さゆりよりもさらに肌の色は白く、全体的に線が細い。
少し灰色がかった瞳と同じ髪の毛は右側に三つ編みをし、まとめていた。
着ている服は前開きの黒色に近い紺のワンピースで、自分で手直しをしないとサイズが合わない。
3歳年上のさゆりの姉である。
しかし、世間ではさゆりが九条家の1人娘(長女)であり、ゆかりの存在は知られていない。
それは、世間体を気にした父親の考えゆえのことだった。
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