第19話

「話してみて」


「…た…」


「えっ…」


「…見られちゃった…」


「見られたって…どういうこと…?」


さゆりは、ガッとゆかりの肩を掴み、グイッと顔を近づける。


顔は真っ赤で、瞳は涙で潤んでいる。

今にも溢れ出してしまいそうだ。


「寝顔…見られちゃった!」


「えっ…寝顔を…?」


大きく頷き、一気に言葉をまくし立てた。


「教会に行ってステンドグラスを眺めていたら…つい、ウトウトしちゃって…眠り込んでしまってたのっ! それで、目が覚めたら…隣に知らない男の人がいて…。その人が言うには…うたた寝してた私が椅子から落ちそうになったから、肩を貸してたってっ!! しかも、気持ち良さそうに寝てたから起こさなかったって…」


「まぁ…」


「寝顔見られた挙げ句、知らない男の人の肩をかりて寝てたって…。恥ずかしすぎる…」


ゆかりの肩から手を離すと、再び思い出してしまった光景に顔はさらに真っ赤になり、両手で覆った。


「もーおちゃめさんなんだからっ!」


ゆかりは口許を緩ませ、さゆりの頭をつんっと、つっついた。


…おっ、おちゃめって…。

本人にとっては一大事なんだけど…。


思いもよらぬゆかりの発言と仕草にさゆりは呆気にとられてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る