第8話

「……あの時のことは……僕からお話出来ることは何もありません……。僕が出来ることと言えば……あなたに頭を下げ、謝り続けることだけです……」


力なく言葉を紡いだ……。


あの時のことを口にすると言うことは言い訳をすることだ。

自分の身可愛さに……自分の身を守る言葉をつらつら並べるだけだ……。

自分が悪い、それでいい。


ゆかりと目を合わすのも怖い……。

……早く……出来ることならば……一刻も早く、ここを去りたい……。


「……僕は……これで……」


隼一は失礼のないように小暮とゆかりに一礼し、その場を去ろうとした。


その時ーー……。


「二度と思い出したくないっ、話したくないことだと思います。でもっ……このままではいけないっ!!」


小暮が声を荒げて叫ぶ姿を隼一は初めて見た。


「だからっ僕は……差し出がましいことだと分かっておきながらゆかりさんを探し出し、ここへ連れて来ました」


「……小暮……」


「さっきも言いましたが、わたくしは、妹の死の真相が知りたいのです。突然……妹が亡くなり、両親からは何一つ伝えてもらえぬまま、この土地を離れなくてはならなかった……。叶うことなら……ずっと知りたいと思っていたのです」


「……っ……」

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