第7話

「加納様!?」


「……って、落ち着いて下さいっ。大丈夫……大丈夫ですから……隼一様っ!!」


スッーと小暮は隼一に手を差し出す。


パシッ!!


隼一は勢い良く小暮の手を払いのけ、教会内に乾いた音が響いた……。


「……ろっ……やめろっ……」


隼一が喉の奥から絞り出したざらついた声で叫ぶ。


「……僕はもう加納の人間じゃないっ! 加納と呼ぶなっ! 様づけをするなっ! ……やめて……やめてくれっ……」


隼一は頭を抱えたまま、全身をガタガタと震わせ続けた……。

そんな隼一の姿に小暮は再び手を伸ばす。


「大丈夫……大丈夫です。落ち着いて下さい……」


今度は払われることなく、小暮はゆっくり、ゆっくりと震え続ける隼一背中を撫でながら優しく声をかけた。


「息をゆっくり吸って……吐いて下さい……。そう……そうです……。ゆっくり吸って……吐いて……」


しばらくすると隼一は落ち着きを取り戻した。


小暮とゆかりは安堵の表情を浮かべ、お互いに良かったと肩を撫で下ろした。


「……すまない……」


肩を落とし、隼一は申し訳なさそうに呟く。


「……いえ……」


「……」


隼一はその場から立ち上がるが……まだ、少しふらふらする感じがあった。


小暮は隼一を気遣い、声をかける。


「……座られますか?」


「いや……」


隼一はゆかりの側に近づくと、ボソリと言う。


「お見苦しい姿を見せてしまった……。申し訳ない……」


「いえ。私がっ……」


隼一はゆかりの言葉を遮るようにかぶりを振った……。

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