3ページ目 新学期
始業式が終わり、昇降口で秋夜の部活が終わるのを待っていた時、自販機の飲み物を買おうとお金を入れると横から手が伸びてきた。
「ピッ」
カルピスが自販機から出てきた。
横を見ると桜宮が立っていた。
「桜宮、何押して。」
「間島君の奢り、ありがと。」
彼女は笑顔でカルピスを取り靴に履き替え振り返る。
「間島君、夏休みに拾ったノート気にならないの?」
気にならないって言ったら、まぁ嘘になるけど。
ここで気になるって言って話されて手伝ってなんて言われたら、面倒くさいし。
そもそも人と深く関わるのが嫌。
「別に、書きたくなる気持ちわかるし、俺も家族が死んだ時何回か書こうとしたし。」
桜宮は少し暗い顔をした。
「間島君は、遺された人はどうするべきか、わかる?」
それを俺に聞くのか。
親が死んで三年、何も変わらない生活だ、強いて言うなら、生活が1人暮らしになったことくらいだ。
「わかんね、ただ俺は家族が死んでも俺は生きてる、だったら、死んだ3人の分生きようと思ってる。」
飲み物を買いそう言うと桜宮は俺の顔を見た。
俺たちは見つめ合い、桜宮が視線を逸らした。
少し、桜宮の耳が赤いような気がした。
秋夜の部活が終わり夕飯を食べることにした。
近くのファミレスに入り席につく。
「あ、葵!」
「却下。」
どうせ桜宮を呼びたいとか言い出すんだろ、長年相棒のような関係だ。
お前の思考は読めている。
「いや、却下って言うか、もういるよ。」
横を見ると笑顔の桜宮が立っていた。
あまり気が進まないが、いるなら仕方ない。
俺は隣に座らせないように荷物を横に置く。
「はい秋夜君。」
「はいはい。」
桜宮が荷物を秋夜に渡し、俺の横に座る。
なんでだ?なんで俺の周りには馬鹿しかいないんだ。
俺は諦めてメニューを見る。
「間島君何食べるの?」
メニューで顔を隠してもグイグイ質問してくる。
その光景を見て大翔は笑っている。
困っている俺を見るのが大翔は大好きなんだ。
こいつに彼女が出来ても絶対祝わない。
食事を済ませゆっくりしていると思い出したかのように秋夜が話しだした。
「そうだ桜宮さん、そういえばさ、尾崎の事どう思ってる?」
前に尾崎が桜宮に告白したとか、デートに誘ってるって聞いたけど。
尾崎は別に悪いやつじゃない、ただうるさいから俺は嫌いだ。
「う〜ん、尾崎君ね、いい人なんだけど、タイプじゃないからなぁ。」
別に褒めるわけじゃないが、尾崎は顔がいい、腹が立つほど。
それがタイプじゃない、じゃあ誰がタイプなんだよ。
水を飲もうとコップに手を伸ばすと桜宮が話した。
「私、間島君みたいな人がタイプかな。」
「ぶはっ!」
水がすべて大翔にかかった。
急に言われて変なところに水が入りむせてしまった。
「ゴホッゴホッ。」
「おまっ、きったな!!」
桜宮をみると横でお腹を抑えて笑っていた。
こいつ、嫌いだ。
遺書 只野くん @tadanokoukousei
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