第8話 虚無の主、目覚める影



神々の石の前に立つエリンたち。遺跡全体が揺れ、闇の力が一層強まる中、エリンは星の剣をしっかりと握りしめていた。虚無の谷に封じられていた「闇の主」が、ついにその目覚めを迎えようとしていたのだ。


「闇の主……彼がこの谷を支配している元凶なのね」

セリナは冷静に状況を分析しながら、エリンの横で呪文を唱える準備を始めた。カイも短剣を構え、周囲の異変に備える。


突然、神々の石から黒い光が溢れ出し、その中心に一つの巨大な影が現れた。影はゆっくりと形を取り、やがて黒い鎧をまとった巨大な騎士の姿となった。その姿は虚無の谷全体を覆い尽くすほどの威圧感を放っていた。


「これが……虚無の主か……!」

エリンはその姿に圧倒されながらも、星の剣を構えた。虚無の主の目は真紅に輝き、彼に向かって冷たい声で語りかけた。


「星の剣の勇者よ……お前もまた、この虚無に飲み込まれる運命だ」


その声は遺跡全体に響き渡り、エリンたちの心に恐怖を刻み込んだ。しかし、エリンはその恐怖に負けるわけにはいかなかった。自分が選ばれた理由、その答えを見つけるためにも、この戦いに勝たなければならないのだ。





「来るぞ!」

カイが叫び、虚無の主が動き出した。その動きは重く鈍そうに見えたが、闇の力が周囲をねじ曲げ、空間そのものを支配していた。エリンは星の剣を高く掲げ、青白い光を放つと虚無の主に突進した。


しかし、虚無の主は巨大な黒い剣を一閃し、エリンをはじき飛ばした。圧倒的な力だった。エリンは地面に叩きつけられ、息が詰まった。


「強すぎる……!」


エリンは立ち上がろうとするが、虚無の主の次の攻撃が迫る。だがその瞬間、セリナが呪文を完成させた。


「光の結界よ、エリンを守りなさい!」


セリナの魔法がエリンを包み込み、虚無の主の一撃を防いだ。彼女の魔法は、星の力と共鳴していた。


「エリン、諦めないで。君の力はまだ完全じゃないけれど、星の剣は君の心と共鳴するわ。自分を信じて!」

セリナの励ましに、エリンは再び立ち上がった。自分にはまだできることがある。星の剣は彼の心を映し出す鏡だとセリナは言っていた。





エリンは深呼吸をし、剣にさらに力を込めた。その瞬間、剣は今まで以上に強い光を放ち始めた。エリンの心に湧き上がる決意と共に、星の剣が完全に覚醒しようとしていたのだ。


虚無の主はそれに気づき、エリンに向かって突進してきた。エリンは冷静に虚無の主の動きを見極め、剣を振り下ろした。青白い光が虚無の主の黒い鎧を貫き、闇の力が弾け飛んだ。


「まだだ……!」

虚無の主は倒れず、その体から再び闇が溢れ出し始めた。彼の力は、ただ物理的な攻撃だけでは倒せないのだ。


「このままじゃ無理だ、何か手がかりはないのか!?」

カイが焦りながら叫んだ。その時、セリナが目を閉じて呟いた。


「神々の石……それが、虚無の主を封じる唯一の力」


エリンはその言葉に反応し、神々の石を見つめた。虚無の主はその力に反応している。石を使えば、この戦いに終止符を打てるかもしれない。しかし、その方法は不明だった。





「セリナ、どうすればいい!?」

エリンは焦りながら問いかけた。セリナは一瞬躊躇したが、決断したように答えた。


「君が神々の石と星の剣を一体化させるのよ。そうすれば、石の力が剣に宿り、虚無の主を完全に封じることができるわ。ただし、それは君に大きな負担をかけるかもしれない……」


エリンはその言葉を聞き、迷わず決断した。彼は自分がやらなければならないことを理解していた。虚無の主を倒し、この世界を救うためには、自分がその力を引き受ける覚悟が必要だった。


エリンは神々の石に向かって走り出し、星の剣を石に向けて差し込んだ。剣が石に触れると、強烈な光が遺跡全体を包み込み、空間がねじれ始めた。


虚無の主はその光に叫び声を上げながら、崩れ落ちていった。闇の力は星の光に浄化され、虚無の谷全体が浄化され始めた。





エリンは剣を握りしめたまま、崩れ落ちそうになる。だが、カイとセリナがすぐに駆け寄り、彼を支えた。


「よくやった、エリン。これで虚無の主は……永遠に封じられた」


セリナは微笑みながら言った。虚無の主は倒れ、谷は再び平穏を取り戻していた。


しかし、エリンは感じていた。これは終わりではなく、さらなる戦いの始まりだということを。世界にはまだ多くの闇が残っており、星の剣の力を完全に使いこなせるようになるまでには、まだ時間がかかるだろう。





こうしてエリンたちは虚無の谷を後にし、新たな旅路へと歩みを進めた。闇の勢力との戦いは続くが、彼らの絆はさらに強くなり、エリンは再び希望を胸に抱いていた。







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星影の大地 トシ @tosiki9401

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