第7話 虚無の谷へ



エリンたちは、星の神殿を後にし、次なる目的地「虚無の谷」へと向かっていた。道中、風は冷たく、空は陰り始めていた。虚無の谷は世界の端にあると言われ、闇の力が渦巻く危険な場所として知られていた。そこには、かつて神々が残した「神々の石」が眠っているとされるが、そこに至るまでに数々の試練が待ち受けている。


エリンは剣を手にしながら、静かに歩き続けた。覚醒した星の剣が彼に力を与えてくれることは確かだったが、彼の心は依然として重かった。彼が本当にこの世界を救えるのか、そして自分が選ばれた理由は何なのか、疑問が頭から離れなかった。


「どうした、エリン?お前が静かだと、妙に不安になるぞ」

カイが軽口を叩きながら、エリンの隣に歩み寄った。彼もまた虚無の谷がどれほど危険な場所かを知っていたため、少しでも緊張をほぐそうとしていたのだ。


「……虚無の谷に行けば、本当に闇の力を抑えられるんだろうか?」

エリンは自分の不安をカイに打ち明けた。カイは一瞬黙ったが、やがて口元に笑みを浮かべた。


「確かなことなんて誰にもわからないさ。でも、信じるしかないだろう。お前はこれまでやってきたんだ。それが証拠じゃないか」


カイの言葉に、エリンは少しだけ肩の力を抜いた。自分がここまで来れたのは、仲間たちがいたからだ。彼はそのことを改めて感じた。





虚無の谷に近づくにつれて、空気がますます冷たくなり、周囲の景色が不気味に変わっていった。谷に続く道は、険しい崖や黒く染まった木々に囲まれており、まるで世界そのものが腐り落ちていくようだった。


セリナが前を歩きながら、ふと足を止めた。


「ここから先は、闇の力が強まる場所。心して進むのよ」


彼女の声は緊張に満ちていた。虚無の谷は、ただの危険な場所ではない。そこは、かつて神々と闇の力が直接対決した戦場であり、未だにその痕跡が残っている場所だった。





谷の入口に到着すると、前方に巨大な石柱が立っていた。その石柱には、古代の神々の紋章が刻まれており、かすかに輝いている。セリナは石柱に近づき、手をかざすと、紋章が一瞬強く輝き、エリンたちの前に光の道が現れた。


「この道を進めば、神々の石にたどり着くはずよ」


エリンたちは光の道を進み始めたが、すぐに異変が起きた。道の途中から黒い霧が立ち込め、足元が崩れ始めたのだ。闇の力がエリンたちを阻もうとしていた。


「気をつけろ!この場所そのものが、俺たちを飲み込もうとしている!」

カイが警戒を呼びかけ、三人は慎重に進んでいった。しかし、霧の中から突然現れた影がエリンたちを襲った。それは、虚無の谷に潜む闇の魔物だった。





エリンは星の剣を抜き、目の前の魔物と対峙した。魔物は四足で歩き、まるで影そのものが生きているかのような存在だった。カイも短剣を構え、セリナが魔法の準備を始めた。


「エリン、剣を信じて!」

セリナの声が響き渡る。エリンは剣に意識を集中させ、星の力を呼び覚ました。剣は青白く輝き、その光が闇の魔物を照らすと、魔物は後退し始めた。しかし、魔物の数は次々と増えていった。


「これは……無限に湧いてくるのか!?」

カイが焦りの声を上げるが、セリナは冷静に対応していた。


「この地そのものが闇に汚染されているのよ。この谷から早く抜け出さないと!」


エリンたちは魔物の攻撃をかわしながら、光の道を駆け抜けた。魔物は次々と追いかけてくるが、エリンは剣の力で彼らを打ち払い続けた。




やがて、光の道の先に巨大な扉が現れた。その扉には星の紋章が刻まれており、セリナはその前で立ち止まった。


「ここが神々の石が眠る場所……」


扉がゆっくりと開き、エリンたちはその奥へと足を踏み入れた。中には、古代の遺跡が広がり、その中心には巨大な水晶のような石が輝いていた。それが、「神々の石」だった。





「ついに見つけた……」

エリンはその石に手を伸ばそうとした。しかし、その瞬間、遺跡全体が大きく震え、空間が揺れ始めた。


「気をつけて!何かが目覚めようとしている……!」


セリナが叫ぶと同時に、石の中から闇の力が渦巻き始めた。虚無の谷に封じられていた闇の主が、その眠りから目覚めようとしていたのだ。


「ここからが、本当の戦いだ!」

エリンは星の剣を握りしめ、仲間たちと共に、目の前に迫る最大の敵に立ち向かう覚悟を決めた。


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