第46話
放課後。
幼稚園へ向かう道。
「そろそろ暑くなってくなるなー」
「うん。蓮君は夏嫌い?」
「冬よりはいい。冬は寒過ぎて動きたくなくなる」
「ふふ、でも蓮君は夏も暑過ぎて動きたくない、とか言いそうだよね」
「確かに」
他愛ない話しをするこの時間も、私には凄く貴重で、楽しい大切な時間。
「そういえば、兄貴がまたみんなで飯食おうって」
「うん、そうだね」
「俺は冴香だけでいいんだけど、兄貴が頼達もってさ」
そう言いながらも、何処か楽しみにしているであろう気持ちが隠せていないのを、蓮君は気づいていないんだろう。
陸と莉音ちゃんと合流し、四人で帰り道を歩く。
陸と莉音ちゃんが、手を繋ぎながら今日習ったのだという歌を、楽しそうに熱唱している。
この二人は、どんな大人になるんだろう。
幸せな恋をして、笑顔でいて欲しい。
まだ見ぬ二人の大きくなった姿を想像しながら、自然と頬が緩む。
そして、その頃は私も、蓮君と並んでいられたら、幸せだと思う。
「冴香、何か嬉しそう」
「そう? うん、そうかもしれない」
蓮君に笑ってみせて、改めて蓮君と繋がれた手に力を込めた。
〜完〜
気だるげな彼は、戸惑い彼女に求愛し、溺愛する 柚美 @yuzumi773
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