エピローグ

第45話

平和過ぎて、平和ボケしてしまいそうな程に暖かい日差し。



「いい天気……」



「それな。蓮じゃないけど、この暖かさは俺でも眠くなるわ……」



「分かりみー。授業とかしてる場合じゃなくねー?」



「いや、授業は普通に受けなきゃ駄目でしょ」



「唯真面目ー」



「莉央奈不真面目ー」



昼が過ぎ、午後の授業の合間の休み時間、屋上のフェンスに凭れ掛かり、いつものメンバーで空を見上げる。



ただ、蓮君だけは相変わらず私の膝に頭を乗せて、規則正しい寝息を立てていた。



「気持ちよさそうに寝やがって……羨ましいぜ……」



「膝枕くらいしてくれる女いっぱいいんじゃん」



「簡単に言ってくれるけどね、お嬢さん。そんなの頼んだら、見返りがデカいんだって」



「莉央奈がしてやんなよ」



「はぁー? 何で私? 頼エロ魔人じゃん、ヤダよー。そんな言うなら、唯やんなよー」



「……何か前も似たやりとりしたような……君等……やっぱり俺の事嫌いでしょっ!?」



三人のやり取りを見ながら笑う私は、刺さるような視線を感じて下を見た。



いつの間にか開かれた蓮君の目が、まっすぐこちらを見ていた。



「起きてたの?」



「ん、うるさいから目ぇ覚めたし、可愛い冴香見てた」



何で蓮君は恥ずかし気もなく、真面目な顔でそんな事を言うのだろうか。



「うわぁー……ごちそうさまー」



「何か、腹立ってきたな……」



「色々小さい男はモテないよ」



「唯サン、色々ッテ何デショウカ?」



また始まった三人のやり取りを聞いているうちに、授業のチャイムが鳴り、急いで教室へ向かう。



まだ眠そうな顔で桂川君に引きずられていく蓮君が、小さく手を振るから、それに手を振り返した。



授業を受けながら、窓の外を見る。



今では当たり前になった、蓮君や莉音ちゃん、桂川君がいる日常。



入学して、二年生になるまで、知らなかった事がたくさんあって。



まだまだ体験した事がない初めてを、蓮君の傍で体験していけたら幸せだろうな。



なんて、たまに考えてしまう。

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