エピローグ
第38話
卒業証書と花束を持って、校舎を見上げる。
「ほんとに、色々あり過ぎて、忘れられないな……」
この場所で琉玖夜と再会して、恋人になって、危ない目にも合ったけれど、お姉ちゃんと姉妹としてやり直して、仲間達と楽しく過ごして来た。
私にとって、たいした場所じゃなかったはずだった。
思い出深い気持ちでいると、後ろから声がかかる。
「何してんの? オセンチさん?」
「お姉ちゃん」
「おーい、二人共ー、行っくよー」
「早くおいでー」
呼ばれ、みんなが待つ場所へ行く。
「腹減ったー」
玲が伸びをしながら叫ぶ。
「何食う? お姫様達は何食べたい?」
春樹は相変わらず紳士だ。
「ファミレスとかでよくね?」
勇樹が面倒そうに言う。
「あたしパフェ食べたい」
そして姉はマイペースだ。
「パフェはデザートじゃねぇかよ。女って分かんねぇな」
琉玖夜が眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌そうな顔をした。
みんなで街を歩くのも、もうだいぶ慣れた。
ファミレスでご飯を食べながら、色んな話をして、日が暮れ始めた頃、みんなと別れて琉玖夜と手を繋いで帰り道をゆっくり歩く。
「こうやって、学校へ行く道を歩くのも、もう最後だと思うと、ちょっと寂しいね」
「俺は早く卒業したかったから、あんまりよく分からねぇけど、もう美遥の制服姿が見納めってのはちょっと勿体ねぇな」
やっぱり琉玖夜は何処かズレてる。
「最後に制服エッチでもしとくか」
「ま、またそういう事ばっかり言ってっ!」
琉玖夜の場合、冗談ではなく、真面目に言ってる事が多いから困る。
「まぁ、帰ったらすぐヤりゃいいか」
「ちょ……もう……」
これは、本気のやつだ。
何を言っても無駄なのが分かりきっているので、諦めモードな私に、琉玖夜はニヤリと笑う。
「あ、そうだ。俺、冬弥さんのとこに就職決まった」
「冬弥さん、いい人だし、琉玖夜の事気に入ってくれてるし。冬弥さんの所なら安心だね。頑張って」
「理沙さんが会いたがってたぞ。たまには遊びに来いだとさ」
たまに琉玖夜のバイト先のカフェで会った理沙さんは、冬弥さんの奥さんで凄くよくしてもらっている。
「まずはとりあえず帰って制服エッチだな」
「もうっ!」
私達はずっとこんな感じなんだろうな。
これからまだまだ初めての事ばかりが待っている。
それを二人でゆっくり体験して、大人になる。
その長い長い先のいつかを、琉玖夜と共に。
〜完〜
変わる世界 柚美 @yuzumi773
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