第8話 上原湊という男



あの日・・・。



私が一晩一緒に過ごした男。


それは高校生だった。


そして・・・・。


その男とは、


どんな人?






え・・・・。


「手が付けられないッ???」


唯一の女子教師、小見川先生と・・・保健室の50代後半の先生と3人でお昼を食べる。



それがもう習慣になった。


あの・・・妙な再会を果たした??してしまった私は・・・この高校に来てすでに1週間。



麦野に言われた


「1日居りゃわかる・・・」


それはその日のうちにわかった。


私は取りあえず副担任は受けず、英語の担当だけ。



どのクラスに行っても授業を聞く生徒は1割もいない。


大体一人授業で終わる。


そして・・・一番酷いのは6組。


6組は男子生徒だけしかいないクラス。


「手が付けられないって・・・何となくは分かりますけど・・・・」


私がお弁当のから揚げを口に入れ言った。


「特に上原君と上地君・・・あの二人とーー・・1年の頃からつるんでる肥後誠君と・・鮎川太一・・・・この4人はもう手が付けられない。」


「例えば・・・???」


なんか想像はつくけどーー・・・。


「んー・・2年まであの子達横浜の暴力団構成員と付き合いあったとかいう噂もあって・・・流石に退学かって思ったけどお兄さんたちが頭下げに来てー・・・」


お兄さん・・・・。


親じゃないんだ・・・。


小見川先生はパンを囓りながら得意気に話し続ける。


「あ、あの二人ッ!上原君と上地君ねッ!あの二人は元は沖縄出身で、沖縄県の高校が入学拒否したとかでうちの校長が受け入れてーー今は、従兄が高校近くに住んでるとかで、二人はそこに下宿して~二人のお兄さんは、今都内で働いてるってことで何かがあるとお兄さんたちが来るのよ。」


保健の先生も頷いた。




なんか・・・。



謎の生徒だなー・・。


沖縄出身なんだ。


てか・・・入学拒否って・・・。


一体何したの??



お弁当箱を持って職員室に戻り・・・歯ブラシを持ってトイレの方に行こうとすると・・・・。


あ・・・・。


向こうから噂の4人が歩いてきた。


あーー・・最悪。




授業は未だに6組入った事ないし・・・・。


行内では会わない様に避けてたのに・・・・。




思わず方向転換し彼らに背を向けると、


バタバタっと足音が聞こえ・・・・・。


「瑠衣ちゃーーん!久々じゃん???先生だって言ってくれればよかったのにッ!」


そう言って来たのは誠君・・・じゃない!!



肥後君。


「ってか・・その呼び方やめてくんない??貴方たちだって23なんて嘘ついて・・・・」


チラッと後ろに居る上原湊を見ると、


ニヤッと笑って肥後君を退かし前に出てきた。




そして、私の肩に手を回し


「なぁ、・・・もう逢わないってお前言ったよな?」


・・・・・・///////


そっ・・・それは!!!



「それはぁっ・・・!!貴方たちが高校生だなんて知らなかったし・・・・・・・・」


焦って言うと上原湊は笑って・・・。


「じゃー、今日夜逢おうぜ?」


はっ?!


「逢うわけないでしょッ・・何言ってんの・・・・!!!」


上原君の胸を押し言うと・・・・・。


脇から金髪の上地君が顔を出し・・・・。


「高校生とホテル行ったってバラしちゃおっか?」


そう言って、ニカッと笑った。




うっ・・・・。


こいつらーー・・・・・・。


流石問題児。


教師を脅すとはッ!




すると・・・タイミングよく職員室から麦野ッ!!


「おいこらーーーッお前等校内ナンパ禁止だぞ!!」


麦野は笑って言いながら、肥後君の肩をポンポンと叩いた。


すると、皆はゲタゲタ笑い・・・・。


上原湊はグッと私の耳元に顔を近づけ・・・・。



「17時に終わりだろ?・・・・ここ出て右にある駐輪場に居る。」



そう言って・・・・。


行ってしまった・・・・。




なに・・・。


マジで私、脅されてる??


歯ブラシを持ったまま立ち尽くしてると麦野が来て・・・。



「葉月先生大丈夫???」


・・・・・・・。


「あの・・・あの子達って・・・・」


歯を磨いた後麦野と少し話をした。


あの二人は入学して直ぐ・・・校内で結構派手に喧嘩。


でもその相手は3年生。


相手は15人ほどいたが・・・・2人で呆気なく圧勝。



その後同じ学年内で幅を利かせ6組はあの二人がほぼ仕切る状態。



イコール・・・・


この高校はあの二人が・・・仕切っている。


イジメや強姦などはしないが・・・・とにかく喧嘩が多いという。


上原と一緒に居る上地は、この前横浜市内で暴力団組員に喧嘩を売られボコボコニした挙句・・仕返しに来た組員の手にフォークを刺し一回警察に捕まったが・・・・


相手がやくざという事もあり・・・


向こうも被害届は出さず穏便に。


穏便ッ?!


暴力団相手に穏便て何っ?



上原湊は暴力団との付き合いをやめる時・・・事務所で暴れて組員全員を病院送りにしたとか・・・いうあくまでも噂。


でも、女子に手を上げたり窃盗や恐喝、イジメも全くしないため校内でもかなり人気。



使い捨ての様な女子は溢れかえるという・・・。





その日・・・



17時に終業。


どうしよう・・・。


校門を出て・・・右に行くと・・・彼らがきっと居る。



そしてきっと・・・脅される。


金取られるかも!





ダメダメ!!行くな私ッ!!


私は方向転換し・・・自分のマンションに向かった。


高校は江の島近くの海沿い。


私のマンションは江の島大橋から鎌倉方面に歩いた海沿い。


海を眺めながら歩いていると・・・・・。


海沿いに大きなパーキング。




えっ・・・・・。


あれっ?!


思わず足を止め・・・パーキングを見ると・・・・。


大きなバイクが何台か止まってて・・・・。



ブォンッ・・・・・・と吹かしながらこっちを見るのは着替えを済ませた上原君。


えっ・・・


右と左ッ・・・私間違ってないよねッ・・・・・。


慌てて走ってマンションに向かうと・・・・。



上原君はガードレールを軽く飛び越え、反対側に居た私の前に軽い足取りで立ちはだかった・・・・。





「なっ・・・なに??外で逢う必要ないでしょ??」


私が言うと・・・上原君は笑って・・・・。


私の頭を掴んだ。



ひっ・・・・


「お前・・・言うよ?・・・・俺とホテル行ったこと・・・」


こっ・・・・


この男ーーーーーーっ!!!


「脅す気ッ???貴方達だって・・・23って嘘ついたじゃないッ・・・」


そう言うと上原君は笑って・・・・。


「良いから着替えて来いよ、待ってるから!」


はっ?!


「な・・・なんでっ?!」


口答えすると・・・・。


グッと抑えてる頭をまた自分に近づけ・・・・・。


「目立つだろ?そのスーツ!・・・可愛い格好してこい・・デートしようぜ?」



はぁっ?!


「したくないしっ!!」


そう言うと上原君は私の耳元に口を持って行き・・・・。


「大輔を忘れたいんだろ?・・・明日校長に言ってやってもいいんだぜ?俺・・・この前、お前と何度もセックスしたって!」



・・・・・・ッ?!





最悪。


マンションに戻ってスーツを脱いだ。


はぁ・・・。


深いため息をつき、さっき上原湊が言った言葉を思い出した。


可愛い格好???


そこで、はいはいって言いなりになる私じゃない。


その辺にあったデニムにTシャツ。


化粧も直さずそのままマンションを出た。




何アイツ。


ただのガキのくせに。




セックス何度もしたって・・・・。


・・・・・。


やっぱしたんだ・・・。


私・・・。



マンションを出るとバイクに乗った上原君・・・。


私の姿を見つけるとバイクから降り私の方まで歩いて来た。


こんな部屋着みたいな恰好で残念???




ぴらぴらした服が良かったでしょ???


そう思ってると、


私にメットをかぶせて来てベルトを締めてきた。




「・・・・何処行くの?・・・・」


私が言うと・・・・。


「ホテル行く?」


はっ?!


「行くわけないでしょッ!!!!!」


上原君は笑って私の手首を掴みバイクに座らせた。




なんなの???


「ねぇ・・・マジで私・・・君と関わりたくないんだけど・・・・」


私が言うと・・・・。


上原君は何も言わず・・・・。


バイクのエンジンをかけて・・・・。


バイクを走らせた・・・。




なんなの?・・・・。


信号で一旦止まると・・・・。


「ね・・・何処行くの?」


取りあえず聞いてみる。


上原君はこの前とは違って・・・・。



上原君の腰に手を回す私の手を両手で触って・・・。


「お前がその大輔って奴が忘れられるようなとこーー・・・。」


・・・・・・。


な・・・・


なに??




こいつ、本当は


優しいの??


それともムカつくの???


なんなのっ???





1時間半くらいかな・・・。


バイクは走り続け・・・・。


たどり着いたのは海っぺり。




「ここ何処??」


私がキョロキョロして言うと・・・上原君は私のメットを外し・・・・。



「三浦海岸の方!!」



何で私に関わってくるの??


私がジッと上原君を見てると・・・・・。



「なに?・・・なんか変?」


上原君は笑って言った。


「なんで私に関わるの?・・・私困るんだけど・・・。」


そう言うと上原君は一瞬黙って私の手を掴み歩き出した。



「ねぇ、聞いてるの??私は貴方の高校の先生なんだよ??こんなとこ見られたら・・・」



「見られたら?首になる??」


・・・・・・。


そりゃ、クビになるよね。


しかも就任して速攻クビとか・・・流石にヤバいし、その理由が男子生徒と・・・・とか親にバレたらマジでヤバい。



「別に・・・上原君の事好きとかじゃないし・・・好きでもない男の為に首になるのは嫌だし!」







──湊said




マジで・・・。


コイツって俺のこと舐めきってる。


俺がお前を誘う理由???




そんなの決まってるだろ?


「好きじゃない?」


俺が言うと・・・・瑠衣は・・・・。


「好きな訳ないじゃない!」


・・・・・・・あーーーー・・・マジムカつく!!


瑠衣の手を自分の方に引き寄せ自分の胸に収めた・・・。


あの日からずっとずっとイライラしてた。


俺だって瑠衣が好きとかじゃない。


だけど、あんなにアッサリ全てを断られたのは初めて。


全く納得いかない。





「何してんのッ???警察呼ぶからねッ・・・・」


瑠衣は俺を押し、少し怒った口調で言った。


「お前、俺のこと好きじゃないって言ったよな?」


好きじゃない・・・・。


すっげーー・・・胸の奥に刺さった。


何度も言うけど、


俺だって好きじゃない!




でも、


今まで言われたことがない


『好きじゃない』


という言葉。




なのに、



「言った!だって好きじゃないもんッ!」


瑠衣はシレッとした顔でそう言った。




アーーーーーーーっ!!!!


もう無理!!


傷付いた。


とかじゃない!


違う!


ただ、スゲームカツク!




瑠衣の肩を両手で掴み瑠衣の顔をじっと見つめた。


・・・・・・・・。





「どうしたら好きになる?」


何聞いてんの俺・・・・。


なに・・・


何言ってんの俺ッ・・・・。



イライラして、ムカついてんのに


出てきた言葉は、


『どうしたら好きになる?』






しつこい様だけど、


俺は瑠衣を好きじゃない!!




でもな・・・・。


瑠衣は俺をジッと睨み・・・・。



「私は君を好きにならない。」


・・・・・・・。



なんだろう。


プライド?プライドが傷付いた?


イヤイヤ違う。


なんだこの悔しい気持ち。








「・・・・3カ月・・・・・。」



そう・・・3カ月あれば


俺は瑠衣の肩を掴み言った。





瑠衣は顔を上げて・・・・


「3カ月?・・・・なにそれ・・・・」


「3カ月で俺のこと好きって言わせる」


「はっ?!・・・・何言ってるの?私を落とせると思ってるの????」




煩い煩い!!!!


俺は瑠衣の肩を離し・・手を繋いだ。



「止めてってばッ・・・・」


瑠衣は手を振り払おうとした、が


ガッチリ手を繋いだ。


「・・・いやだねー・・・」


「はぁっ?!・・・・なんなのっ?!子供のくせにッ・・離してーーー!!!!」


あーーー・・本当傷つく。


でも俺・・・・。


絶対、


こいつを落としてやる。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Forbidden love~大好きになりました @maru111453

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画