第7話 奇跡的な再会
新しい職場。
そこは・・・。
神奈川でも有名な・・・・。
ヤバい場所。
──5月半ば
「おはよーーーー!」
はぁ・・・・。
キンキンと若いキャピキャピした声が聞こえる中、私は立っている。
私が立つその目の前には・・・・。
【湘南城東学園】
城東・・・上等??
マジギャグなの??って名前で・・・・。
マジで入りたくない。
足が動きません。
神奈川県でも有名な荒れまくりな高校。
私立湘南城東学園。
何故か私はその高校の校門前に立ち・・・・。
若いギャルたちにチラチラ見られながらA4サイズが入るバックを肩から下げて真面目をアピールする眼鏡をかけ・・・。
校門を潜れないでいる。
「あーー・・、葉月先生ッ!!校長が校門前に貴方がいると聞いて迎えに伺いましたッ!!」
うっわー・・・。
ジャージ姿のむさくるしそうな真黒な人が走ってきて言った。
明らかに・・・。
「私体育を担当してます!麦野と申します!!」
でしょうね。
そうじゃなかったら詐欺になる。
あーーーあ、・・・・最悪。
こんな事になるんなら、自分でカフェとかコンビニとかでいいから取りあえずバイトしときゃ良かった。
ムキムキ麦野に案内され私は校長室へ。
はぁ・・・。
この前は授業中だったし生徒に会う事は無かったし楽ちんだったけど。
今日はもう違う。
生徒にじろじろ見られながら私は嘘臭い笑顔を浮かべ・・・
「おはようーー。」
って言いながら校長室に向かった。
私に挨拶された生徒は・・・・。
「なになに?新米???それとも実習っ??」
ヒソヒソとそんな声が聞こえる。
新米・・・ね・・・・。
そうですそうです!!新米でーーす!
ここでは問題を起こしたくないしもう大人に近い高校生相手。
こんな地獄のような世界に放り込まれたんだからここで嫌われるわけにはいかないッ
頭の中はそんなことでいっぱい。
するとあっという間に校長室につき・・・・
コンコン・・・と麦野がドアをノックした。
「お久しぶりです、葉月先生!」
ツルツル頭の校長。
アンタ、そんな仏みたいな顔をしてさ、
もっと生徒に厳しくした方が良いんじゃない?
何て心の中で思うが・・・・。
「今日から宜しくお願いします・・・。」
頭を下げ・・・言った。
その後、校長の長いながーーーーい話を聞き私は職員室へ・・・。
「ここの評判は聞きました???」
職員室に向かう間麦野が言った。
聞かなくても耳に入るし・・・・。
「まぁ・・・なんかヤンチャな子が多いとは。」
ヤンチャで済めばいい。
「ヤンチャねーー!・・・まぁ1日居ればわかりますよっ!受け持ちは3年の英語って事で・・・ちょっと大変だろうけど何かあったら、自分話を聞くんで言ってくださいねッ!!」
・・・・・・。
3年かーーーー・・・・。
もう大人じゃんッ・・・・。
職員室に行くと麦野は窓際のデスクに案内してくれた。
「わぁーー・・若い先生来た、超嬉しいッ!!」
ちょっとキャピキャピした・・・いやいや、かなりキャピキャピした少しふっくらした女性が私の方まで走って来て・・・。
「葉月先生何歳だっけ???」
・・・・・・。
かなりコミュニケーション能力高そう。
「23です・・・。」
「わっかーーーい!私25っ!!よろしくねっ!!」
・・・・て・・・誰???
まぁいいや。
握手をして、その後は教頭の真鍋先生が私を皆に紹介してくれた。
教師は全部で30人程・・・。
全部紹介するのは面倒なので主に・・・・。
3年・・・。
3年は全部で6クラス。
学年主任は強面の村田先生、推定55歳。
副主任は川辺先生、推定45歳。二人とも男の先生・・・。
麦野先生は3年6組の担任29歳。
英語は他3組の網野先生、推定30歳男性・・・。
って、ここー・・あのぽっちゃり先生以外男の先生???
ぽっちゃり先生は3年5組の副担任の小見川先生。
「では、今日は葉月先生就任という事で臨時の全校朝会ですので体育館に行きましょうか!」
教頭がそう言うと・・・・。
「葉月ちゃんッ!!一緒に行こ??皆の前であいさつできる???」
小見川先生がそう言って私の横に来た・・・。
挨拶かーー・・・。
「まぁ・・・簡単に、」
そう言うと小見川先生は笑って・・・・。
「生徒が騒がしいけど気にしないでね!」
え・・・・。
その時小見川先生に言われたその言葉・・・・。
まっさかそんなにーーー???
少し覚悟はしていたけど。
少し舐めてた。
体育館に行くと・・・・。
・・・・・・・。
『引き返したい。』
私の体が全身でそう訴えてるのが分かった。
学ランの生徒と・・・紺のブレザーの女子・・・。
皆きちんと並んでーーー・・・ない。
もう公園状態。
プロレスをしていたり、女子は皆座ってぺちゃくちゃ喋ってて・・・・・。
ワーワーーキャーキャーー・・・声が・・・・。
あ・・・・。
頭痛い。
私は、地味なグレーのスーツに・・・。
髪も地味ーーーーにひとまとめ。
眼鏡をかけ・・・・。
伊達だけど真面目に見えるかなと思ってカモフラージュでかけた眼鏡。
小見川先生と麦野と教頭先生に囲まれて生徒の脇の通路を歩く。
「おみーーー、そのおねーさん誰――?????」
おみっ?!
まるで友達を呼ぶかのようにそう言うのは・・・・。
生徒の中でいかにも・・・俺ッッ悪いですっ!て顔をした男子生徒がこっちを見て言った。←失礼。
小見川先生は笑って・・・・。
「新しい先生よーー、可愛いでしょ?皆仲良くねーーー!」
えっ・・・
今の高校ってこんな感じッ???
私、転校生じゃないよね?
私が固まってるとその男子生徒は笑って走って来て・・・。
「うっわ!超可愛い!!」
ひっ・・・・!!
「こら、室井!向こう戻りなさい!!」
ナイス麦野!
直ぐに私とその生徒の間に入りそう言って生徒を戻るように促した。
でもその男の子は麦野を押し、
「超可愛いーーー!先生彼氏いるッ???」
そう言って私の眼鏡を外し言った!!
ゲゲゲゲッ・・・・
「ちょっと返してッ・・・」
生徒は私の眼鏡を高い位置に持ち上げ・・・・
「ねっ、彼氏いるの??今度デートしようよ??」
うっ・・・
「すっ・・するわけないでしょっ?!早く返してっ!!」
「えーーー???じゃー―返さない!!後で3-6まで取りに来てね?」
げげげげげげーーーっ!!
何この高校!!!
その生徒はそう言って私の眼鏡をかけ皆の輪の中に戻って行った。
「あーーーあ、・・・もう早速うちの組に関わっちゃいましたねーー・・・」
麦野が言った。
えっ???
うちの組?
「6組は特にヤンチャ君集めてる組っ・・皆、良い子なんですけどね・・・ちょっとー・・ヤンチャ度がねぇ・・・」
小見川先生が笑って言った。
いやいやいや、良い子じゃないでしょっ!!
学校でナンパ??先生の眼鏡取る??
まぁ・・伊達だから良いけどさ・・・。
って!!
私も今流されそうになったけど!!
ダメでしょッ!!!
あーー・・・。
もう帰りたい。
全校朝会ーー・・・。
始まってるはずなのに・・・
まさにこの自由過ぎる感じ。
「えー――っと、皆さん・・・来週は皆さんが毎年楽しみにしてる球技大会がありますねー・・」
校長が話していてもだ~れも聞いていない。
球技大会、楽しみにしてるのはツルツル校長だけなんじゃっ・・・。
きゃっきゃ生徒は自由に歩き回って・・・トイレに行く子まで・・・・。
「あのー・・いつもこんな感じなんですか?」
私が言うと・・・・。
「・・・酷いときは喧嘩が始まりますからまだ良い方かなーーー!」
小見川先生は笑って言った。
け・・・喧嘩・・・・。
流石上等・・じゃない、城東学園。
私こんな中・・・挨拶できないんですけど・・・・!
目の前の動物園化した生徒たちを眺め不安な気持ちでいっぱいになっていると・・・・。
「では今日から就任の葉月先生・・・前へどうぞ。」
はぁ・・・。
やっぱ・・・やりますよね・・・。
絶望感満載の中私は舞台脇から舞台袖に入った。
すると、そこには同じ英語の網野先生がいた。
「先生、ファイトッ!」
両手を胸の前で握り腰をクネッとさせ笑って言った。
なんか立ち振る舞いが・・・オネエみたいだけど。
「葉月ちゃんッ!!笑顔笑顔!!生徒は若い先生大好きだしーー葉月ちゃん可愛いから大丈夫ッ!!!♡」
えっ・・・・
やっぱ・・・。
オネエか?!
舞台の方を見ると校長がニコニコ笑って手招き。
生徒の方からはガヤガヤやっぱり騒がしい声。
カチンコチンになった私は・・・・。
勇気を振り絞って舞台袖から舞台へ・・・・・。
チラッと大勢の生徒の方を見ると・・・・。
ん・・・
なんか・・・
遅刻の生徒なのか・・体育館の入り口から学年主任の村田先生に掴まれて2人が気怠そうに歩いて来たのが見えた。
・・・・・・・。
え・・・・・。
一瞬、胸の奥にズンッと深く刺さるような衝撃。
「ぇえっ?!」
思わず声を上げ・・・・・・。
私は慌ててまた舞台袖へ逃げたッ・・・・・・
嘘・・・・・。
嘘嘘嘘ッ!!!!!!!
頭が真っ白で・・・私はその場にしゃがみ込み頭を抑え込んだ。
「葉月ちゃんッ??どしたっ??頭痛い??」
網野先生が私の肩を掴み背中を撫でてくれた・・・。
嘘・・・・。
すると・・・生徒たちの方から・・・・。
ピューピューーと口笛の音・・・・。
「早く出て来いよーーーー!」
「きゃははーーーーっ!!!」
煽るような声が聞こえる。
胸の奥が激しく鳴った・・・・・。
だって・・・。
だってあり得ないっ!!
「葉月ちゃん??」
・・・・・・・。
暫くしゃがんでいると・・・校長が私の方まで来て・・・・。
「一緒に行きましょうか、皆楽しみにして待ってますよ・・・」
楽しみ?
全くそんな風に感じない。
──だって・・・・・。
校長に手を借り・・やっとこさ立ち上った私・・・・。
舞台袖からまた顔を出し・・・・生徒たちの方を見ると・・・
「・・・・・ッ?!//////////」
私はまた顔を引っ込めた。
やっぱそうだっ・・・・・・
アイツ・・・・。
上原・・・・
湊・・・・。
──湊said
俺と龍は今日は学校には来る気0。
だったのにーーー・・・
制服で近くのカラオケに行こうとしたら、うちの先公に見つかり連れ戻された。
ギャーギャー大騒ぎの体育館に入り、俺と龍は学年主任の村田に首根っこ掴まれ・・・・。
「ったくーー・・お前等またサボる気でいたんだろ?」
あーーーあ、・・・家に居りゃよかった。
太一と誠は今日は午後から来るって言ってたけど・・・
それ正解!
俺等が6組の場所に行こうとしたとき・・・・。
皆が一瞬静かになって・・・舞台の方から・・・
「ぇえっ?!」
って・・・・
聞き覚えがある声がした・・・・・。
この声。
どこかで聞いた。
・・・・・・。
「あれーーー????・・・・・なんで瑠衣ちゃんがあんなとこにいんだ?」
龍がゲタゲタ笑って言った・・・・。
そうだ・・・・。
舞台上に居た女は・・・・
この前俺をズタズタに刺しまくった女・・・・。
瑠衣だった・・・。
・・・・・・・。
瑠衣は俺に気づいたのか直ぐに舞台袖に戻って・・・・。
暫くでて来ねーし・・・・・。
「あっれ??瑠衣ちゃんって先生だったのーー??」
龍はゲタゲタ笑いながら6組の場所に座り込む。
「知らねーし・・・・。」
俺は立ったまま舞台の方を見てると・・・・。
また瑠衣が出て来て・・・・。
こっちを見た瞬間ッ・・・・。
ドテッ!!!!
と、凄い音を立てて転けた。
体育館内・・・・爆笑・・・・。
あの女ーー・・・ヤバいな、何も無いところで転けれるもんなのか。
舞台で転けたアイツは、校長に手を借り起き上がって・・・・
またこっちを見て・・・・。
真赤な顔をして俺を睨みつけてきた。
もう逢う事は無い・・・・って言ったけどさ・・・・。
お前から来たじゃん・・・・。
俺に逢いに・・・・。
瑠衣said
なんで・・・。
湊君が・・・学ラン着てるの???
頭が真っ白の中やっとマイクがあるとこまでたどり着く。
・・・・・・。
さっきまで騒いでいたくせに・・・・皆こっちを見て・・・。
アイツまで・・・見て笑ってる。
なんなのーーーーっ?!
マイクを校長に渡され・・・・。
「葉月先生、簡単でいいですから!」
・・・・・///////
顔を上げるとやっぱ皆こっちを見てる・・・・。
金髪・・・オールバック・・・女子は大体ギャル・・・。
一番奥には・・・湊君。
私・・・高校生とホテル行ったの???
犯罪じゃんッ!!!!
ピューピューー!!
「早く挨拶ーーーッ可愛い先生ーーーー!!!」
うるさい・・・。
「先生彼氏いるのーーー???ぎゃははーーー!」
振られた振られた!!
「彼氏いないなら今度デートしようぜーーー!」
そんな煽りに皆また盛り上がり、皆が私を見て笑った。
この子たちに恨みもないし、別に怒ってもいないんだけど・・・
凄くイライラした。
皆が私を見て笑って、・・・奥にいる湊君が・・・
顔を少し上げ、ニヤッとする顔が視界に入った時。
「うるさいっ!!」
私がマイクを持って、思わず言ってしまった。
そして、キーーン・・・とスピーカーが鳴った・・・・。
・・・・・・・。
「私は葉月瑠衣。23歳、教師は教育実習しかしたことないから初めて!彼氏は最近出て行った!」
・・・・何をペラペラ言ってんだ・・・私。
一番奥の上原湊の方を見て・・・・。
「でもー・・、私高校生と付き合う趣味無いから!!!」
・・・・・・。
そう言うと一瞬生徒は静かになったけど・・・・。
また爆笑・・・・。
上原湊はそんな私を見て・・・・。
顎を上げ笑った・・・。
なに?
なんなの???
もう・・・。
逢いたくなかったのにーーーーっ!!
カラオケみたいにマイクを投げてやりたいけど校長に低調にお返しし・・・・
舞台を降りた。
──湊said
この前とは違って・・・・。
地味なスーツなんか着て・・・・。
高校生と付き合う趣味はねーか・・・・。
へーーー・・・。
また、俺の胸をザクザク刺しやがった。
俺は朝礼を最後まで聞かず直ぐに教室に戻った。
あの日・・・・。
アイツと一緒にホテルに行って・・・・。
もう逢う気はないって言われた。
悔しさだけで終わったあの日。
「湊ーーーー!もう朝礼終わったーーー???」
下駄箱の方から走って来たのは太一と誠・・・。
「あれ?お前等午後から来るって言ってなかったっけ?」
俺が言うと・・・太一は笑って・・・・。
「さっき、室井からライン来て、新任の女教師がメチャ可愛いって言うから見に来た~!」
思わず噴き出して笑ってしまった・・・。
「確かに・・・・可愛いよッ!!まだ体育館に居んじゃない??見て来いよッ・・・」
可愛いか・・・。
まぁ・・・。
やっぱ可愛いな。
めちゃくちゃムカつくけど。
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