第14話

《一週間後》


相変わらず、ななの部屋から大きな声で、絵本を読む声が聞こえる。


「なな! 夕飯出来たから早く来なさいよ!」


ママが、ななを食卓に呼んだ。


「はーーいっ! 今から行くよ!」


元気よく返事をするなな。


食卓に来たななに向かってーーーー


「なな、また絵本を読んでいたのかい?」


先に食卓にいたパパが、微笑みながら言った。


「うん、だって大好きなんだもん」


ななも微笑みながら返した。


「なな、今日は残さず全部食べるのよ」


ママが、食育の一環で言った。


「うん、分かってるよ、ブロッコリーさんもニンジンさんも役割と役目があるんだから」


ななの言葉に、顔を見合わせるママとパパ。


ななは、有言実行とばかりに、大嫌いだったブロッコリーとニンジンを頑張って食べて、手を合わせた。


「ごちそうさまでした!」


そして、足早に部屋から落書き帳を持って来た。


「ねぇ、パパ」


「なんだい? なな」


「実は、絵本を描いたんだけど、パパに読んで欲しいの」


「うん、いいよ」


パパは、知らないフリをして返事をした。


「やったぁーー! はい、これ」


ななは、喜んで落書き帳をパパに手渡した。


そして、パパは読んで驚いた。


物語が変わっていたのだ。


しかも、その物語はパパが絵本の中の世界で体験した事だった。


「パパ、どうだった? 面白かった?」


「うっうん…… とても良く描けてるね……」


「また描くんだ!」


「えっ! また描くの? 次は、どんな物語にするの?」


「エヘヘ、まだ内緒だよ」


「楽しみにしているね!」


「うん!」


ななは、そう言って部屋に戻ろうとしたが、振り返って不敵な笑みを浮かべながらーーーー


「パパ、また宜しくね!」


ドキッとするパパ。


ふと、ななの手元を見るとーーーー


両手には、クレヨンが握られていた。





             ーおわりー

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『みかんちゃんといちごくん』 阿知尚康 @achinaoyasu

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