第9話
男はまっすぐ家に帰ると廊下の中ほどでしゃがみこみ、古い家屋の柱に残された二人兄妹の背比べの傷跡を懐かしむようにそっと撫でた。
そして男自身の全財産を詰めた黒いリュックと、母と妹の遺品を全て詰め込んだ小ぶりのグレーのボストンバッグを肩にかけて家を出た。鍵を不動産会社に渡すとその足で最寄り駅に向かった。
男はICカードで改札をくぐってすぐ、人混みに紛れて一年前と同じように姿を消した。
その顔には大粒の涙と、笑顔が溢れていた。
ニゲラ こーの新 @Arata-K
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます