おまけ
ママが煎れてくれたコーヒーを飲み干すと、彼はすぐに立ち上がって「帰ります」と、小さくお辞儀をした。
「あら、もう帰っちゃうの?」
残念そうな声を出すママは、「夕飯食べていけば良いのに…」と、彼を引き止める。
「いえ…」
「でも、全然お話しも出来なくて」
引き下がらないママに、「またにしようよ、ね?」と、声をかけた。
渋々了承したママは、「また来てね」とやっぱり残念そうで。
「はい」
頷いた彼に、やっと安心したように微笑んだ。
「じゃあね、また明日」
家の前。白い息を交えながらふと笑みを浮かべた。
「あ…」
不意に声を漏らす彼。
「なに?」
あまりの寒さに腕を組んで近づくと、
「番号」
彼は携帯を取り出して、
「知りたいんだろ?」
それをあたしへ差し出した。
「知りたい…」
「ほら」
「うん…」
携帯を受け取る手が、緊張からか、寒さの所為か…分からないけど震えていた。
「じゃあ。電話する」
「うん…」
携帯を返すと、彼はグレーのマフラーに顔を埋め、背を向けて歩き出した。
冷える空気に、寒さを頬で感じ、彼の背中を見つめた。
「白い、日…」
その名の通りだと、降り積もる雪を見て笑みが零れた。
———ホワイトデーに期待しちゃうのは、当然だよね。
…だって、あたし達の記念日だから。
ホワイトデー リル @ra_riru
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