ep.5 運送会社:有限会社スピードオブダークネス①

「反社会的勢力を摘発するスン」




バナナペンギンさんは、運送業界の裏側の真実を探るため、ある夜、物流倉庫の前に姿を現しました。彼の丸い黒い体は街灯に照らされ、まるで太ったこけしのように見えます。




彼の前には堂々とデコトラが止まっていました。キャビンには大きく北方領土の絵が描かれており、非常にメッセージ性が強いです。そのトラックは存在そのものが主張の塊のようで、周囲の生物を貫くような鋭い雰囲気を漂わせています。胃もたれしてしまいそうなほどです。




「デコトラのセンスはPopteenのそれに通じるスン」と、バナナペンギンさんの目はぽわんと光ります。




バナナペンギンさんは最近、物流業界で話題になっている「トラックのおじさんがいかつすぎると思う会」の見学に行きました。


そこでは、ごく一部の輸送業者がバナナヤクザやバナナ右翼と関わりがあるのではないかという噂があり、デコトラのドライバーたちが放つ独特の雰囲気も、その噂を裏付けるように思えました。


それを確かめるため、バナナペンギンさんはひとりで調査に向かったのです。




「デコトラは味わい深いスン」




バナナペンギンさんはただの噂に惑わされる性格ではありません。


彼は小さな足で静かに滑り出し、トラックの周囲を調査し始めました。




ふと目をやると。


トラックのドライバーが煙草を吸いながら、倉庫の片隅でぼんやりと立っています。髪は坊主で、鋭い目つきはまるで地獄の番人のようです。しかし、見た目で判断するのは早計だと、バナナペンギンさんは冷静に分析しました。




「おじゃまするスン」


そうつぶやくと、彼はトラックに勝手に乗り込むことにしました。




ペンギンはお腹ですべりながら、ドライバーの足元に向かいます。そして、意を決してその男の膝を軽くつつきました。ドライバーはびっくりと体を揺らし、驚いた顔で足元を見ます。そこには、真剣な顔のバナナペンギンさんがいました。




「なんだ、ペンギンか?」




バナナペンギンさんは何も言わず、ただその場にじっとしていました。男は警戒しましたが、特にバナナペンギンさんが何かしてくるわけではないと安心し、再び煙草を口にくわえます。




「こんなところにペンギンがいるとはな…だが、ここで何をしているかは重要じゃねえ。俺はただ、荷物を運ぶだけだ」




「あなたは反社スン?」




「ひき殺すぞ、てめえ」




その言葉を聞いて、バナナペンギンさんは驚いてお腹を少し震わせました。




「スーンスンスンスン」




「おいおい、泣くんじゃねえよ。いきなり反社呼ばわりするから、ついいつものクセで怒鳴っちまったじゃねえか。」




この男は見た目と違い、ただのプロフェッショナルな運送ドライバーのようです。




「泣かせたおわびに乗せるスン。」




「まじかよ。だるいけど、仕方ねえなあ。泣かしちゃったもんなあ」




「ありがとうスン。ぼくはやさしいペンギンさん。すきなたべものはバナナ。」




「俺は有限会社スピードオブダークネスの黒岩だ。よろしく」




夜の静けさの中、バナナペンギンさんは一旦トラックの中に入り、助手席に潜入しました。


目を光らせながら、ドライバーの動向をじっと見つめます。




しばらくすると、もう一台のトラックが倉庫にやってきました。今度は黒塗りのキャビンに日本国旗が描かれています。運転手は顔中に刺青を入れた大男です。フェイスタトゥーがバナナのスイートスポットのように目立っています。




バナナペンギンさんは目を細めました。




「やっぱりこの倉庫には何かあるスン」




トラックが止まると、ヤバい運転手は静かにドライバーと話し始めました。遠くからでも聞こえる声は低く、緊張感が漂っています。




「お前、何を知っている?」と大男が言います。ドライバーは一瞬ためらいましたが、冷静な表情で答えました。




「俺は荷物を運ぶだけだ。あんたのゲームには関わりたくない」




ペンギンは、その会話から察しました。このドライバーは、裏バナナ社会の人物と距離を置こうとしています。しかし、運送業界にいる以上、完全に無関係でいるのは難しい現実があるのです。




大男は不満そうな顔をして、ドライバーの肩をつかみました。だが、その瞬間――




「パシン!」




バナナペンギンさんが窓からジャンプして飛び出てきました。そして、大男の顔にバナナを叩きつけました。


大男は驚いて、思わずドライバーの肩から手を離します。


バナナは弾け飛び、細かくなったバナナカスが大男の鼻や目の中に入っていきました。




「な、なんだこのバナナ!」




しかし、バナナペンギンさんは大男を許しません。そして、男の顔にジャイアントバナナの皮をかぶせました。大男は呆然としながら、バナナの皮を顔から取り除こうとしますが、手が滑ってうまくいきません。




「モ……モゴモゴ!」




「これで終わりスン」とバナナペンギンさんは冷静に言い放ち、その場を去りました。




ドライバーは呆然としながらも、バナナペンギンさんに話しかけました。




「あ、あのなあ。あいつはただ、アレをやっているだけだったんだよ。」




「なんの違法活動を、スン?」




「いいから乗れ。面倒事になるぞ。」




デコトラと一羽のペンギンは、その場から静かに消えていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バナナペンギンさんの激ヤバ企業訪問 野島しょうきち【ブラック企業専門】 @nojisho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ