第92話

「私じゃない、あなたの将来を潰す訳にはいかない」



本心だった。

自分の心配より、矢島君の方を思ってしまう。


私は自分の足をとめた。

先におりている矢島君を、見下ろす形になり。




「潰させない」



そう言う私の方へと顔を向け、私を見上げる矢島君。




「あなたがなんて言おうと、それは変わらない」


「⋯卒業しても?」


「そうね⋯」


「俺が先生のこと、本気で好きになっても?」



本気で好きにって⋯。



「歳が離れすぎてる」


「10も離れてねぇ」


「やめて」


「俺はあんたが思ってるほどガキじゃない。幼稚園児でもねぇ」


「私にとってはガキよ」


「そう思わせねぇ」


「ガキよ、資料室で見た時、とんでもないクソガキがいると思ったわ」


「そのクソガキに、本気になれっていったのはあんただろ!」


「⋯」

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